2007年7月14日(土)「しんぶん赤旗」
最低賃金
中央審議会始まる
現行673円 引き上げが焦点
参院選の争点になっている最低賃金の引き上げについて審議する中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が十三日、始まりました。貧困と格差が広がるもとで、生活実態を反映した大幅引き上げが示されるかどうかが焦点です。
この日の審議会では、審議の進め方などを確認しました。八月上旬には各都道府県をA―Dの四ランクに分けて引き上げの目安を提示。これを受けて各県労働局の地方審議会が具体額を決め、十月ごろ改定を行います。
現行は平均で時給六百七十三円、月額にすると平均十一万数千円。とても生計費をまかなえない低さで、労働者の所定内給与の37%しかなく、世界でも最低クラスです。全労連や連合はこぞって「時給千円以上」にするよう求めています。
昨年度に中央審議会が示した目安は、時給二―四円です。労働組合のたたかいで埼玉県などで上積みされましたが、それでも五円でした。
「千円以上に」 全労連が宣伝
「最低賃金を直ちに千円以上に引き上げろ」―。全労連は十三日、今年の最低賃金の引き上げ額を審議する中央最低賃金審議会が始まった厚生労働省前で、最賃の大幅な引き上げを求めました。
「今年の改定から大幅に引き上げろ」「時給千円以上は人間らしく働き生きるための最低条件です」と書いたプラカードを持つ約五十人が参加。「貧困と格差をなくせ」と声を上げました。
あいさつした全労連の大木寿副議長は、時給千円が参院選の争点になっているとし、「貧困と格差の是正を求める大きな世論を、政府と審議会は受け止めよ」と強調。「わずか数円の引き上げなど許されず、生活できる最低賃金が求められている」とのべました。
生協労連の桑田富夫委員長は「パートの仲間は一刻も早く最賃が引き上げられ、少しでもゆとりある暮らしがしたいと待ちに待っている」と訴えました。自交総連の小林隆書記次長は「タクシー労働者の賃金は、最賃を下回っているところもある。とても生活できない」とのべました。
参加した全労連・全国一般合同労組の武田実副委員長は「労働相談では月収十万円前後の人が多い。低過ぎる最賃が働いても食べられない人を増やしている。時給千円と全国一律制度が必要です」と話しました。
解説
直ちに大幅引き上げを
最低賃金の引き上げにかんして政府と自民・公明与党は、最低賃金法改正案を前国会に出しながら、まともな審議もせず継続審議としました。
しかし、ワーキングプア(働く貧困層)をはじめ貧困と格差をなくすために法改正を待つことなく、直ちに大幅な引き上げが求められています。
政労使が参加する「成長力底上げ戦略推進円卓会議」では、最賃水準の基本方針は先送りしたものの、今年度は「従来の考え方の延長ではなく賃金の底上げを図る」よう最賃審議会に要望せざるをえなくなっています。
ところが、政府・与党や財界側からは、“最賃水準の見直しは法改正が実現してから”として、今回の引き上げを抑えこむ動きが出ています。
安倍首相は抜本的引き上げについて「企業の経営を圧迫する」と拒否。使用者からも「経営を圧迫させるだけ」「中小企業の生産性が向上してから」と反対する発言が相次いでいます。
引き上げをリードすべき厚労省も「三十人未満の零細企業」の賃金をもとにした従来型の算定で、昨年実績と変わらない「五円」を提示するなど、貧困と格差が広がる事態をまったく顧みない姿勢を示しています。
最賃の引き上げは、大企業の不当な単価切り下げをはね返し、国民の消費購買力を高めて中小企業を潤すなど、中小企業支援策と併せて行えば、中小企業の経営を守る力となるものです。
参院選の争点として世論が広がるなかで、最賃を大幅に引き上げさせ、全国一律最賃制の確立など法制度改正につなげていくたたかいが焦点になっています。(深山直人)
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