2007年7月13日(金)「しんぶん赤旗」

最低賃金22・5%アップ

貧困ラインの収入上回る

アルゼンチン


 【メキシコ市=松島良尚】アルゼンチンの政府と労組、経営者団体からなる雇用・生産性・最低賃金審議会は十日、圧倒的な賛成多数で最低賃金の年内22・5%引き上げを決定しました。トマダ労相は、最低賃金が貧困ラインの収入水準を初めて超えることになると力説しました。


 改定によって、現在の最低賃金月八百ペソ(約三万一千円)は、八月、十月の段階的引き上げを経て、十二月から九百八十ペソになります。今年六月に算定された貧困ライン収入(家族四人)は九百二十三ペソ、極貧ラインは四百二十九ペソです。

 アルゼンチンの一人当たりの国民所得は四千七百ドルで日本の約八分の一です。

 トマダ労相は、貧困ラインの収入水準を超える最低賃金の確立が今回の交渉の目的だったと指摘。引き上げは正規労働者四十万人以上の給与アップに直接つながり、政府が現在根絶にとりくんでいる未登録の「闇労働」の給与にも影響するだろうと述べました。また、新自由主義が吹き荒れた一九九〇年代をふりかえり、「我々は、長い間洗脳されてきた考え方とは逆に、社会的包摂をともなう(社会的落後者を生まない)経済成長が可能であることを示している」と強調しました。

 同国最大の全国労働組合センター、労働総同盟(CGT)は千四十ペソの最低賃金を要求していましたが、今回の結果について「不十分だが、重要な前進」と評価。アルゼンチン労働者センター(CTA)は、生活の必要性にもとづく新たな貧困ライン収入水準を算定することが約束されていないとして、審議会では棄権しました。

 新自由主義からの脱却をめざす同国のキルチネル政権は、経済や雇用、社会保障などにおける国家の役割を重視しています。経済、金融危機を経て同政権が発足した二〇〇三年以降、輸出競争力の回復などを背景に9%前後の経済成長を続け、貧困層は半減しました。

 最低賃金は九三年以来据え置かれていましたが、キルチネル政権のもとで政労使審議会が発足。最低賃金引き上げは今回を含め五回目です。


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