2007年7月12日(木)「しんぶん赤旗」

参院選をめぐる各党の政治姿勢と政策


【年金】

日本共産党

 「消えた年金」問題で、被害者を一人も残さず、一日も早く解決する立場で、「1億人へのレター作戦」など緊急提案し、政府を動かす。「消えた年金」問題の解決に対する国の責任を放棄する社会保険庁解体・民営化法案に反対。年金受給条件を諸外国なみの10年以上加入に引き下げることや、全額国庫負担の最低保障年金制度(当面月5万円に支払った保険料に応じた金額を上乗せ)を提案。

自民党

 政権党でありながら、「消えた年金」問題の原因をもっぱら社会保険庁の「体質」にすり替え。世論におされ、年金記録の1億人への通知を約束するが、それも来年度から。社会保険庁の解体・民営化を強行し、「消えた年金」問題の国の責任を投げ捨て。給付水準を15%も削減し、保険料は毎年引き上げる2004年年金改悪を推進する。

公明党

 「100年安心」の年金と宣伝していた一方で、同党出身の坂口力厚生労働相は「消えた年金」問題を放置。「消えた年金」問題の国の責任を投げ捨てる社会保険庁解体・民営化法案を強行。給付カット、保険料引き上げを国民に強いる2004年年金改悪を、いまだに「100年を見通す改革」(同党ホームページ)と自画自賛し、反省なし。

民主党

 「最低保障」年金制度を打ち出すが、現在の無年金・低年金の解決には役に立たないもの。しかも「最低保障」年金の財源は全額消費税でまかなうというものであり、年金を改善しようとすると消費税増税が避けられない危険性がある。なお、「消えた年金」問題でも、基礎年金番号導入時に十分な対策をとらなかった厚生大臣は菅直人氏。

【庶民増税】

日本共産党

 庶民大増税に反対し、大企業・大資産家ばかりに減税という不公正をなくす。住民税の大増税は中止し、すでに実施された増税分は「戻し税」方式で国民に返す。最悪の不公平税制である消費税の増税にきっぱり反対。欧米に比べても異常に低い所得税の課税最低限を基礎控除の倍加などにより大幅に引き上げる。無駄遣いにメスを入れ、大企業・大資産家に応分の負担を求め、くらしの予算を確保。大企業の法人税率を10年前に戻し4兆円を生む。

自民党

 定率減税廃止に続き、消費税増税を打ち出す。2007年度をめどに「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」と公約に明記。安倍首相は「秋に抜本的な税制改正を行う。消費税を上げないとはひと言も言っていない」(5日、民放テレビ)と発言。消費税を増税しようとしながら参院選では「争点にしない」などと国民の審判を受けずに、消費税率を引き上げようとしている。

公明党

 定率減税の廃止と高齢者への増税を真っ先に提案し、推進。増税分は年金の財源として活用するというが、実際には増税額(国税分)の5分の1しか年金財源に回さず。安倍自民・公明内閣が閣議決定した「骨太の方針」に、2007年度をめどに「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」と明記。

民主党

 「政策10本柱」に「庶民増税中止」の柱なし。いま家計を直撃している定率減税廃止による庶民増税への反対表明もなし。「消費税率は現行のまま行政改革を優先して年金の財源に充てる」としているが、「将来、消費税の増税は不可避だ」(鳩山由紀夫幹事長、6月25日の講演)という立場。大企業・大資産家減税には自民党以上に熱心。

【社会保障】

日本共産党

 貧困と格差を打開するため、国民の生存権をまもる社会保障の拡充をかかげる。「ストップ貧困、いのちをまもる緊急福祉1兆円プラン」として、国民健康保険料の1人1万円値下げ、介護保険料・利用料の減免拡充、子ども医療費を無料化する国の制度の創設、障害者福祉の「応益」負担撤回、生活保護・児童扶養手当の切り捨て中止を公約。医師数の抜本増などによる医師不足の解決、高齢者に過酷な負担と差別医療を押しつける「後期高齢者医療制度」の抜本的見直しを要求する。

自民党

 医療費負担の大幅引き上げ(02年・06年)、介護保険のサービス切り捨てと負担増(05年)、障害者福祉への「応益」負担導入(05年)、生活保護の切りすてなど、貧困を広げる改悪をつぎつぎ強行。さらなる社会保障給付費の削減を打ちだす(「骨太方針2007」)。

 「医師不足問題への早急な対応」(マニフェスト)を公約するが、医師数の抜本増に背をむけ、いっそうの「医療給付費抑制」を計画する。

公明党

 「福祉の党」を自称しながら、医療の窓口・保険料負担増、介護保険法改悪、障害者福祉の「応益」負担、生活保護・児童扶養手当の削減などを自民党と一体に推進。

 これらの改悪を、「安心の医療を構築する改革」「予防重視の介護保険への転換」「障害者福祉の拡大」など“改善”と描く宣伝をつづける。

民主党

 多くの「介護難民」を生みだした介護保険法改悪(05年)に賛成。旧民主党の時代にも、国民健康保険証のとりあげ義務化(97年)、母子家庭への児童扶養手当削減(02年)などのくらし切りすてに賛成した。自公政権の医療改悪を批判し、「医師不足の解消」(マニフェスト)をいうが、財界には「公的医療給付費の抑制」を公約(06年、「日本経団連と政策を語る会」)。一般病床・療養病床などの44万床削減を提唱している(「民主党医療制度改革大綱」)。

【雇用】

日本共産党

 人間らしく働けるルールをつくる。人間を「使い捨て」「モノ扱い」する働かせ方をやめさせ、非正規で働く人たちの雇用と権利を守り、正社員化をすすめる。最低賃金を引き上げ、ワーキングプア(働く貧困層)をつくらない。「サービス残業」を根絶し、異常な長時間労働を是正する。過去5年間だけでも852億円の未払い残業代を支払わせた実績を持つ。

自民党

 選挙公約で「若者の雇用機会の確保」「働く人の公正な処遇」などをかかげるが、雇用を破壊してきたのが自民党。労働法制の規制緩和で、働く人の3人に1人、若者や女性の2人に1人が非正規雇用という低賃金・不安定雇用を生み出す。残業代を横取りし、長時間労働を野放しにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」(労働時間規制の適用除外)の導入をあきらめず。

公明党

 重点公約に雇用政策なし。政策集のなかに、「生活を犠牲にしない働き方」「若年者雇用への支援」の項目があるが、自民党とともに雇用破壊をすすめたのが公明党。違法だった労働者派遣を13業種に限り可能にした労働者派遣法の制定(1985年)、労働者派遣の原則自由化(99年)、製造業への労働者派遣の解禁(2003年)や裁量労働制の拡大・導入要件緩和など労働法制の規制緩和をことごとく推進。

民主党

 「政策10本柱」で「雇用を守り、格差と戦う」と公約。しかし、雇用破壊に手を貸し、貧困と格差を広げてきた“実績”への反省なし。民主党や自由党(後に民主党と合併)は、裁量労働制をホワイトカラー全般に広げる改悪(1998年)、労働者派遣の原則自由化(99年)に賛成。企業がリストラ・人減らしをすればするほど減税になる「産業再生」法の改悪・延長(2003年)にも賛成。

【外交】

日本共産党

 「靖国」派の侵略戦争正当化の策動を許さず、首相の靖国参拝中止や供物の奉納中止を要求。「従軍慰安婦」問題でおわびした「河野官房長官談話」や植民地支配と侵略への反省を表明した「村山首相談話」の立場で行動することを要求。日米軍事同盟の再編強化に反対し、アメリカいいなりから抜け出す日本外交の転換を求め、イラクからの自衛隊撤兵を要求。核戦争の防止と核兵器の廃絶のために実効ある措置を要求。北朝鮮問題で6カ国協議などの枠組みを生かした平和的外交的解決を主張。

自民党

 「従軍慰安婦」問題で首相が強制性否定発言を行うなど政府の公式見解にも逆行。同問題で日本に謝罪を要求した米下院決議にも多数の議員が反発し、米紙に広告を出す。久間章生前防衛相はアメリカの原爆投下を「しょうがない」「選択肢としてありうる」と発言。米軍再編などを通じて「日米同盟を強化」するとし、NATOなどとの軍事協力を探る。「国家安全保障会議」の設置や海外派兵恒久法も盛り込む。

公明党

 自衛隊のイラク派兵強行など自らすすめた悪政には公約で何も触れず。首相の靖国参拝では歯止めにならず、「従軍慰安婦」問題での首相発言や官房副長官の暴言にも抗議せず。在日米軍再編も「着実に実施」と公約、ミサイル防衛も「着実な整備に努める」など日米軍事同盟強化の路線をつきすすむ。

民主党

 「靖国」派議員を多数抱え、「従軍慰安婦」問題での米下院決議反対の広告にも13人が名を連ねる。「主体的な外交」を主張するが、日米関係を「外交の基盤」とする点では自民と同じ。米軍再編でも「地元の理解」があれば推進する立場。「自衛隊のイラク派遣終了」を主張するが、海外派兵は否定せず。

【憲法】

日本共産党

 憲法改悪の暴走にストップをかけるもっともたしかな力。「世界の宝」ともいうべき憲法9条を守るために党派の違いを超えた共同を発展させる。海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使に向けた政府の憲法解釈変更の動きに反対。侵略戦争を正当化する「靖国」派による戦前・戦中の国家体制への逆戻りに反対。基本的人権や民主主義、男女平等など、憲法の全条項を守るために、全力をあげてたたかう。

自民党

 安倍首相は「憲法改正を必ず政治日程にのせていく」とのべ、公約の冒頭で2010年までに「憲法改正の発議をめざ」すことを宣言。同党の「新憲法草案」では、9条2項を撤廃して「自衛軍を保持する」と明記、海外派兵を可能にする規定も盛り込むなど、「米国と海外で肩を並べて武力行使する」ことが狙い。侵略戦争を肯定・美化する「靖国」派が策動の中心に。

公明党

 公約で「3年後を目途に加憲案をまとめることをめざします」と改憲姿勢を宣言。9条に第3項を加え、自衛隊の明記と国際貢献を明記することを検討。同党議員は「(護憲から)改憲の立場に変更したのは公明党だけだ」と自認、自民党からも「『改憲』を明らかにした政党」と指摘される。

民主党

 参院選の主要公約には憲法問題が一言もないなど、憲法論争を徹底して避ける。05年の「憲法提言」では、「自衛権を明確にする」として集団的自衛権の行使に道を開き、国連の軍事活動参加で「武力の行使を含む」と明記するなど、9条改悪では自民党と同じ土俵。マニフェスト各論でも「現行憲法に…改めるべき点があれば改める」と改憲の立場を打ち出す。

【農業】

日本共産党

 農業を国の基幹産業に位置づけ、食料自給率の向上を国政の柱に据える。輸入の自由化一辺倒や価格暴落のばなしの農政を転換し、生産コスト(米では1俵1万7000円以上)をカバーする価格保障を柱に所得補償を組み合わせ実施する。一部の大規模経営だけでなく、続けたい人やりたい人すべて支援。財界やアメリカの横暴をきっぱりと批判し、WTO協定など輸入自由化に唯一反対を貫く。

自民党

 大規模な農業者だけを支援対象とし、大多数の農家を切り捨てる「品目横断対策」を実施。安倍内閣は、農家の猛反対を無視して日豪EPA交渉を開始し、食料の海外依存の拡大、いっそうの輸入自由化などで、残された農業をも一挙に壊滅させかねない事態に。「守るべきは守る」というが、財界いいなりでは“選挙が終われば自由化”になりかねない。

公明党

 小泉・安倍内閣の与党として、「品目横断対策」や価格暴落のばなしの「米対策」など農業つぶしの悪政を推進してきた。米の輸入自由化が大問題になった90年代にいち早く部分開放を宣言、WTO農業協定の批准に賛成した。「都市農業の振興」を掲げるが、農地の宅地並み課税を強化する92年の生産緑地法改悪に賛成した。

民主党

 全販売農家への「戸別所得補償」の創設を公約するが、農産物輸入の全面自由化が前提。関税撤廃で米価は一俵5000円に暴落することも容認。小沢代表や菅直人元代表は「企業参入も自由に」「農地法は『廃止を含めて議論』」などを主張。昨年末の「マグナカルタ」では「米国とのFTA早期締結、あらゆる分野で自由化推進」するとしている。

【政治とカネ】

日本共産党

 政治の不正・腐敗をただし、「清潔な政治姿勢」を貫く。閣僚らの事務所費疑惑も共産党の追及が発端。企業・団体献金と政党助成金制度という、政界の二つの“麻薬”の根絶を主張。それができるのも、日本共産党が双方ともいっさい受け取らないただ一つの政党だから。天下り合法化の「新人材バンク」に反対、全面禁止を要求。

自民党

 佐田玄一郎前行革相、松岡利勝前農水相に続き、赤城徳彦農水相の事務所費疑惑が発覚するなど、「政治とカネ」の問題絶えず。ところが公約では「政治資金の一層の透明化」として、領収書添付5万円以上、資金管理団体のみとした“ザル法”の政治資金規正法「改正」をあげるだけ。企業・団体献金に依存し、政党助成金も二重どり。

公明党

 首相と一緒になって赤城農水相を「違法でない」とかばい立て。政治資金規正法「改正」では、自民と5万円超の領収書添付で合意。同党出身の閣僚の政治資金収支報告がすべて5万円以下となっている事実はほおかむり。選挙公約でも「政治とカネ」には一言もなし。自らも政党助成金を受け、企業・団体献金も復活。

民主党

 事務所費問題では、小沢代表が約4億円もの不動産取得費を計上していた問題が発覚。公約では、「事務所費の透明化」を掲げ、1万円超の領収書添付を打ち出す。党収入の8割以上を政党助成金に依存し、日本経団連の政党通信簿も受け、企業・団体献金も拡大をめざす。「国会議員定数の1割以上削減」を公約、少数政党締め出しを狙う。


社民党

 「9条と年金があぶない」がスローガン。「9条改憲を絶対に許しません」と公約するが、改憲政党の民主党と山形、香川、秋田、富山、愛媛などで選挙協力。社民党推薦で宮崎から無所属で出る民主党支部長はマスコミアンケートで改憲に賛成し、「自衛隊保有を明記」と回答。格差是正では、派遣労働を「一部職種に限定」することや「充実の医療」などを掲げるが、派遣労働の原則自由化や国保証取り上げ義務化に賛成してきた実績にはふれず。

 「国民すべてが受けとれる『基礎的くらし年金』」を公約するが、基礎年金部分の支給を65歳まで繰り延べした年金改悪(1994年)をしたのは社会党の村山内閣。

国民新党

 郵政民営化で造反した元自民党議員らが結成。「正々堂々『抵抗勢力』」を掲げるが、参院選後の態度は「政局判断する」として与党入りの可能性も。幹部のほとんどが日本会議議連の役員など「靖国」派。政策では、「自主憲法の制定」や「道徳教育の充実」など自民党そのもの。「積極財政による内需の拡大」などムダな公共事業推進も示唆。


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