2007年7月12日(木)「しんぶん赤旗」
最低賃金 各党は
「ワーキングプア」(働く貧困層)の増大など貧困と格差が大きな争点の参院選挙。その打開策として最低賃金の引き上げを各党とも掲げていますが、その違いをみてみると―。
日本の最低賃金は時給六百七十三円、月額にすると平均十一万五千円。とても生計費をまかなえない低さで、労働者の平均給与の32%しかなく世界でも最低クラスです。全労連や連合もこぞって「時給千円以上」にするよう求めています。
日本の最低賃金が世界でも最低水準になっているのは、「生計費」を基準にすべきなのに、企業の「支払能力」を基準に加えているためです。地域ごとにバラバラに決めていることも、格差を広げ、水準を引き下げる要因になっています。
世界をみると、ILO(国際労働機関)がデータを公表している百一カ国のうち62%の国が、「生計費」あるいは「労働者とその家族の必要」を基準に定めています。
日本のように「企業の支払能力」を定める国は十五カ国。地域格差を残している国はわずか九カ国しかありません。
世界第二位の経済力をもつ日本が企業の「支払能力」を基準にしたり、地域ごとに格差を掲げているのは異常です。
共産党 「千円以上に」
日本共産党は、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」ができる水準に最低賃金を引き上げるのは国の責任だとして、労働組合が一致して求める時給千円以上を目標に抜本的に引き上げるよう主張しています。
どこで働きどんな職業に就いていても適用される全国一律の制度にするよう求めています。
最低賃金の決定基準は生計費のみとし、現行法にある「支払能力」を削除します。中小零細企業が最低賃金を支払えるように、大企業の下請けいじめや規制緩和による過当競争を規制するとともに、助成措置を講じることを提案しています。
自民・公明 抜本上げ反対
自民・公明の与党は、現行制度が掲げる「支払能力」基準はそのままにし、都道府県ごとにバラバラに決める仕組みを維持する立場です。産業別最低賃金については罰則をなくし、廃止の方向にかじをきりました。
国民の批判を受けて前国会に、「生活保護水準との整合性に配慮」するとの規定を設ける最低賃金法改定案を提出しましたが、まともな審議も行わずに、継続審議扱いとしました。抜本的引き上げについては「経営を圧迫する」(安倍首相)と拒否しています。
中小企業の経営を圧迫しているのは賃上げではなく、不当な単価の切り下げなど大企業の不公正取引が原因です。最低賃金の引き上げは単価に転嫁しやすく、大企業による単価の切り下げをはねかえすために役立つものです。
労働総研の試算では、最賃を千円に引き上げれば、国内総生産を二兆六千四百億円増やし、とりわけ中小企業を潤すことが指摘されています。
民主党 地域格差拡大
民主党は、全国最低賃金として八百円、地域最低賃金として平均千円をめざしています。現行法でも、最高の東京と最低の沖縄など四県との差は百九円。現行を上回る二百円以上の大幅な格差を認めるなら、貧困と格差をなくす最低賃金制の本来の役割が大きく損なわれることになります。
十八歳未満の若者と七十歳以上の高齢者について、最低賃金を減額するという措置を新たに盛り込んでいることも重大です。減額措置は現行法にもない重大な改悪です。ILOは、年齢によって最低賃金に格差を設けることを批判しています。
また、日本共産党は、最低賃金法を公務員にも適用することを求めていますが、政府・与党、民主党ともに、公務員を適用除外にしています。
国や自治体で急増する臨時職員や公務パートが最低賃金スレスレの水準で働いている実態が指摘されています。国や自治体がワーキングプアをつくりだすなど許されないことであり、民間、公務問わず、最低賃金法を適用することは急務です。
■各党の最低賃金政策
|
■関連キーワード