2007年7月10日(火)「しんぶん赤旗」
米のイラク撤退主張
国防長官歴訪延期
政府、中間報告提出へ
NYタイムズ
【サンフランシスコ=山崎伸治】米政府は一月に開始したイラクへの米軍増派後のイラク情勢に関する中間報告を十五日までに議会に提出します。国防総省は八日、その対応にあたっているゲーツ国防長官が今週予定していた中南米四カ国歴訪を延期したと発表。イラク情勢への対応に米政府が苦慮していることを強く示唆しました。この日付のニューヨーク・タイムズ紙は大型社説で、「いまこそ米国はイラクから撤退すべきだ」と論じています。
ゲーツ国防長官の歴訪延期は同氏が中間報告についての会議に出席するためとされていますが、予定された外遊を直前にキャンセルするのは異例です。
米政府はイラクへの増派について、イラク駐留多国籍軍のペトレアス司令官とクロッカー・イラク駐留米大使が九月に報告を行い、その後の駐留規模を確定することにしています。しかし増派後、バグダッドの武装勢力掃討作戦を実施するなかで米兵の死者は急増。その結果、与党・共和党内からのブッシュ政権批判も強まっています。中間報告は政治的に重要な意味を帯びています。
八日付のワシントン・ポスト紙は、米政府が中間報告の準備の過程で「戦争支持を継続するよう議会に説得するため、進展を示すほかの証拠を集めている」と指摘。イラクのアンバル県のイスラム教スンニ派指導者が反アルカイダの姿勢を示したことや宗派間の殺し合いが六月には減少したことなどを「証拠」として示すとしています。
しかし同紙は「こうした“実績”は、ブッシュ大統領がイラクに数万人を増派するという決定を発表したときに示した指標とは明らかに異なる」と指摘。増派がまったく効果を上げていないことを強調しています。
一方、ニューヨーク・タイムズ紙社説は、撤退について「今すぐ政治決定を下すべきだ」と強調。米国にはイラクを再建する責務があると考えて撤退の期日を設けることにも反対したことを自省的に振り返りながら、「イラクに派兵し続けることは、イラクの事態を悪化させるだけだ」と強調しています。
さらに、「米兵の命を犠牲にし続けるのは誤りだ」と指摘し、「ブッシュ氏の計画は大統領職にあるうちは路線を変えず、(混乱を)後継者に尻拭いをさせるというものだ」と批判しています。
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