2007年7月10日(火)「しんぶん赤旗」

赤城農水相 事務所費の“怪”


 赤城徳彦農水相の十年間で九千万円にのぼる架空事務所経費問題は、疑惑を明らかにしないまま辞任した佐田玄一郎前行政改革担当相、自殺した松岡利勝前農水相に続いて、安倍内閣が「政治とカネ」をめぐって、自浄能力も危機管理能力もないことを浮き彫りにしました。安倍首相は、またも問題閣僚をかばうのか―。改めて赤城農水相の「事務所経費」疑惑の重大性を検証しました。


領収書不要 1億円超す

実体に疑問 2政治団体

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(写真)赤城農水相が支部長の政党支部があるビル=水戸市

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(写真)赤城農水相の実家。政治団体の事務所という雰囲気はありません=茨城県筑西市

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(写真)「徳政会」の事務所の所在地となっている妻の実家=東京都世田谷区

 赤城農水相は、みずからが支部長を務める「自民党茨城県第一選挙区支部」(水戸市)、議員会館に事務所を置く資金管理団体「徳友会」、「赤城徳彦後援会」(茨城県筑西市)、「徳政会」(東京都世田谷区)という四つの政治団体をもっています。

 このうち、赤城徳彦後援会は、茨城県筑西市の実家に、徳政会は東京都世田谷区の妻の実家に、それぞれ「主たる事務所」を置き、ともに実体がなく「架空事務所」と指摘されています。

 赤城徳彦後援会は、一九九六年から二〇〇五年の十年間に、事務所費、光熱水費、備品・消耗品費、人件費といった領収書添付の義務付けがない「経常経費」を計九千四十五万円も計上していました。徳政会も同じ十年間の「経常経費」は計千四百九十六万円。二団体あわせて、領収書添付が求められない支出は、一億円を超えました。

 実家に住む赤城農水相の母親は当初、「秘書などはおらず、わたしたち(夫婦)が住んでいるだけ。選挙の際には水戸の事務所が中心で、ここを使って活動はしていなかった」と事務所の実体がなかったことを証言。その後、実家側は「『事務所』としての活動が以前ほど活発でない」という趣旨であったと“修正”しています。

 これは、昨年十二月、実父が経営していた佐田建設東京支店を、「佐田玄一郎政治研究会」という政治団体の事務所として届け出、九〇年からの十年間で計七千八百万円にのぼる架空事務所経費が発覚、辞任した佐田前行革担当相とまったく同質の問題です。


光熱水費 月10万円の年も

月800円換算 05年だけ

 安倍首相は、八日のテレビ討論で、赤城徳彦後援会の〇五年の光熱水費の支出、九千六百六十円だけをとりだし、「月八百円だ。八百円の人を辞めさせるのか」などと開き直りました。

 予習してきたかのように、赤城農水相以上に細かく説明、奇異な印象を与えましたが、これは都合のいい数字をとりあげただけです。

 同後援会の九八年の光熱水費は、百二十九万八千円で、九九年は百三十一万六千円など、月あたりにすると、十万円前後の年が続いています。(表参照)

 赤城農水相は、同後援会について、七日、「実家が主たる事務所だが、水戸でも活動しており、水戸の分を計上している」とのべ、水戸市にある「選挙区支部」の分を同後援会の経費に上乗せしたと説明しました。

 ところが、選挙区支部自体も、表のように約百九十万円―十四万四千円といった光熱水費を計上しています。

 同じ事務所に、選挙区支部と後援会が同居して活動しているとしても、光熱水費の年度ごとの支出には、合算すると、三百万円を超える年(九八年)があると思えば、十五万三千円の年(〇五年)も。じつに二十倍もの、ばらつきがあり、いかにも不自然です。

19万円の年 1000万円の年

計上する額 大きく変動

 赤城農水相の資金管理団体「徳友会」は、家賃のかからない議員会館にあります。しかし、〇五年には、松岡前農水相の三千三百五十九万円や伊吹文明文部科学相の四千百四十六万円には及ばないものの、四百五十五万円の「事務所費」を計上しており、その説明責任があります。

 しかも、〇二年には、千十七万円と大台に乗っています。

 不自然なのは、〇〇年の事務所費は、わずか十九万二千八百八十八円。〇二年の五十分の一以下です。

 政治資金規正法の施行規則は、事務所費について、家賃、税金、保険料、電話代など「事務所の維持に通常必要とされるもの」と規定しており、こんなに大きく変動することは、ふつうありえないとされています。

「問題ない」というなら領収書公表を

 赤城農水相は八日、事務所費などの経費の詳細な公表について、「法律で公表する必要がないのであれば、まさにその法律の趣旨の通りに運用すべきだ」とのべました。

 安倍首相も同日のテレビ討論で、日本共産党の志位和夫委員長から「不明朗な点がないというなら、領収書を付けて(詳細を)出すと、ここで約束すべきだ」と迫られ、「法律に定められたルールにのっとる」と逃げました。

 これは、自民、公明両党が成立させた改定政治資金規正法が、五万円以上の領収書添付の義務付けを資金管理団体に限定しているからです。

 そのザル法ぶりを棚にあげ、領収書公表の必要はないと、逃げることは許されません。

 しかし、やましいところがなければ、公表すればすむ話です。領収書がいらない一億円を超す経常経費をどう使ったのか―。公表できなければ、佐田前行革担当相、松岡前農水相と同じです。辞任しかありません。安倍首相の任命責任が問われています。



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