2007年7月10日(火)「しんぶん赤旗」

主張

07年版防衛白書

歯止めなき海外での軍事活動


 先週末発表されたことしの「防衛白書」は、一月に防衛庁から昇格した防衛省が出した最初の白書です。自衛隊も海外での軍事活動を「本来任務」に加えました。

 一九五四年に自衛隊と防衛庁を創設するさい政府が、憲法違反という批判をかわすために「日本防衛」に限るとしてきた口実はいまや完全にほごにされようとしています。

「日本防衛」は後景へ

 「防衛白書」の特徴は、「世界のなかの日米同盟」の日米合意にそって、自衛隊が海外での軍事活動を本格化することを強調したことにあります。「もはや侵略抑止を最重視した防衛力整備を行っていれば足りる時代ではない」とまでいっているのはそのためです。

 自衛隊は「わが国を防衛するための必要最小限度の実力組織」(五四年十二月二十二日、鳩山内閣の統一見解)というのが政府見解です。

 自衛隊は“日本防衛専用組織”だから問題ないという説明は、自衛隊が憲法九条に違反するという批判をかわすために政府がつくりあげた論理です。それさえほごにするのは、安倍政権が憲法の制約など眼中においていない証拠です。

 白書は自衛隊の「本来任務」として、インド洋での自衛隊による米軍艦船などへの補給支援やイラクでの航空自衛隊による米軍支援、日本周辺でのアメリカの戦争である「周辺事態」での米軍支援などをあげています。「日本防衛」とは無関係で、すべて憲法違反に直結します。

 イラクについても、「治安情勢が非常に厳し」いとか多国籍軍から撤退する国が相次いだことから「海外展開可能兵力の逼迫(ひっぱく)が大きな課題」といっているのは、空自による米軍支援の継続に道理がないことを示しています。

 「日本の平和と安全は国際社会の平和と安全に密接に結びついている」というだけでは海外派兵の論拠にはなりえません。「防衛計画の大綱」を引用して、「国際的な安全保障環境を改善し、わが国に脅威が及ばないようにする」ためというのでは、戦前の政府・軍部が侵略の口実とした「生命線」論の復活です。

 「防衛白書」の発表直前、アメリカの原爆投下を「しょうがない」といった久間章生防衛相は辞任しました。しかしこの問題では、日米合意でアメリカの核抑止力が日本防衛に「不可欠」といってきた政府も同じです。安倍晋三首相も、アメリカの核抑止力が「きわめて重要」(四月二十四日衆院本会議)といっています。「核抑止力」は核兵器の使用を前提とした脅しの論理です。それを認めるのは、アメリカが核兵器を使用するのは「しょうがない」と発言するのも同じことです。安倍首相も責任を免れることはできません。

 海外派兵はアメリカの要求です。アーミテージ元米国務副長官らは二月公表の報告で、「必要な場合に、短い期間で海外に部隊を配備」することを求めています。これ以上、歯止めなき海外派兵の道に進むことは許されません。

「自衛隊監視」が必要

 自衛隊の国民監視活動があきらかになり、国民の怒りを買っています。しかし、白書は国民、地方公共団体の「理解と協力が必要」といいながら、国民や地方議会の活動を日常的に監視していることにはふれていません。批判する国民を敵視していることはあきらかです。海外派兵に突き進む自衛隊の違憲・違法な国民監視活動を国民の側から監視し、告発し、やめさせることが重要です。


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