2007年7月2日(月)「しんぶん赤旗」

主張

国民生活白書

社会的連帯の視点が必要だ


 内閣府の『国民生活白書』が、家族や職場で働く人、地域住民相互の「つながり」が弱くなっているとして「再構築」の方向をさぐっています。

豊かな結びつきを

 人々がお互いに理解し、交流し、協力し合うことは、よりよい暮らしをつくっていくためにも大切です。困ったときに助け合うさまざまなネットワークがあれば、人生を支える力となります。憲法は、個人の尊重とともに、思想・信条の自由、結社の自由や勤労者の団結権を定め、人間相互の自主的自発的で豊かな結びつきを保障しています。

 しかし、白書が再構築するとしているのは、副題にある「つながりが築く豊かな国民生活」にも逆行しかねないきわめて一面的なものです。

 家族・地域の「つながり」では、家族が一緒にいることや、家族としての「一体感」を強く求めるものとなっています。いまや全世帯の三割近くが単身世帯です。一人親の家庭も増えており、家族の形は多様です。こうした変化に応じたとりくみが必要なのに、政府が「一体感」を押し付ければ、かえって、多様な人間相互の関係を封じ込めることにもつながります。

 「つながり」をテーマにした三年前の国民生活白書は、個人や家庭では解決の困難な問題が増えているとして、民間非営利団体(NPO)による高齢者支援やゴミのリサイクルなど多様な活動を紹介していました。それと比べても、人のつながりを内へ内へと閉じ込めてしまう特異な観点が目立ちます。

 「一体感」の押し付けは、家族生活における個人の尊厳と両性の平等を定めた憲法二四条の精神からみても問題です。戦前、「家制度」のもとで、女性が個人として尊重されなかったことへの反省から生まれた憲法二四条が息づく豊かなつながりが保障されなければなりません。

 「職場での人と人とのつながり」も、大企業を中心にした成果主義賃金や非正規労働者の増加など職場の“変化”にふれるものの、働く人相互のつながりをつくっていく方向は何一つ打ち出せていません。

 たとえば、長時間労働が家族一緒の時間をつくる障害になっていると指摘しておきながら、けっして「長時間労働の規制」や「労働時間短縮」はいいません。「ワーク(仕事)・ライフ(生活)・バランス(両立)」を推進するというのです。

 財界が、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉で導入をねらっている「ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の除外)」は、一日八時間を超えて働いても残業代を支払わず、長時間労働を野放しにする制度です。労働時間短縮に逆行するのでは、家族が豊かなつながりを築くことにはつながりません。

草の根の力の発揮を

 「仕事への意欲や企業の業績」のみをねらって、「つながり」再構築が検討されており、労働者の権利の擁護は無視されています。

 白書に欠けているのは、憲法にもとづいて前進する社会的連帯の視点です。安倍・自公政権が、暮らしを壊し、平和を壊す暴走をつづけるもとで、「社会的連帯で反撃を」を合言葉にさまざまな分野で国民の運動が新たな前進を開始しています。若者が立ち上がっていることも国民を励ましています。「つながり」が希薄になっているといって危機感をあおるのではなく、暮らしに息づく草の根からのネットワークの力の発揮に視点をおきたいものです。


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