2007年6月30日(土)「しんぶん赤旗」
主張
福知山線事故報告
命と安全への責任を果たせ
死者百七人、重軽傷者五百六十二人にのぼる史上最悪の鉄道事故となったJR西日本福知山線脱線事故で、航空・鉄道事故調査委員会の報告書が公表されました。
国土交通省の下に置かれ、独立性が十分でない機関の調査という限界から、国の監督責任を明確にしなかったのは問題です。JR西日本にたいしては、安全軽視の企業体質をあげ批判しました。国、JR西日本は問題を重く受け止め、国民の命と安全への責任を果たすべきです。
驚くべき安全軽視
事故で最愛の家族を失った遺族、いまも体と心の傷に苦しむ犠牲者がこの報告にかけた思いは大きなものでした。原因を徹底して究明し、二度と悲劇をくりかえさない対策がたてられることこそ、事故からたちあがるための「第一歩」だからです。
報告書は、運転士のブレーキが遅れ、電車が制限速度を大幅に超えたまま急カーブに進入したことに事故の直接の原因を求めました。その上で、背景の要因も分析しています。
▽余裕時分ゼロの無理なダイヤ編成▽欠陥ブレーキや誤差の大きい速度計の放置▽新型ATS(自動列車停止装置)設置の先送り等々、指摘された問題は多岐にわたります。
安全を二の次にする企業体質の象徴として、日本共産党が事故直後の国会でとりあげた「平成17年度支社長方針」(「I 稼ぐ」と目標の第一にもうけをかかげた)にも着目しています。当の大阪支社長は委員会の聴取に「誤解されたのであれば『稼ぐ』を一番上にしなければよかった」と弁解していますが、JR西日本の驚くべき安全軽視は明らかです。
運転士が重大な運転ミスをした心理的要因として、懲罰的な「日勤教育」の問題を重視しています。日勤教育は一九八七年の国鉄民営化後、社員にたいする統制の手段としてJRに持ち込まれたものです。ミスを組織の問題として改善するのでなく、個人責任に帰し、見せしめ的な処分を重ねていました。
国鉄分割民営化に源流をもつ収益至上主義と安全軽視の企業体質、問題解決を困難にする異常な労務管理が事故の背景であることは、もはや否定のしようがありません。
JR西日本が、それを反省しているかは疑問です。「日勤」は見直したといいますが、成果主義賃金の拡大で管理職の評価が昇給・昇進に大きく響く仕組みが強まり、風通しの悪い風土はいっそう強まったという見方があります。安全への投資を拡大したといっても、現場業務の外注化がすすみ、社員数は八七年のJR発足時の約五万二千人から今年四月現在で二万九千人と激減、技術継承も危ぶまれています。
今年二月、事故調査委員会の意見聴取会で陳述した同社副社長は「ダイヤは余裕があった」「日勤教育は正当だ」と開き直り、怒りをかいました。その無反省をこの機に改めなければ、「安全を最優先する企業風土の構築」(同社「安全性向上計画」)などのぞむべくもありません。
規制緩和の誤り認めよ
航空、鉄道、バスなど大量輸送機関の重大事故が頻発しています。「市場競争のなかで危険な業者は淘汰(とうた)されるから安全は確保される」という「神話」のうえに、安全まで規制緩和してきた運輸行政の誤りがその根本にあります。
日本共産党は、政府の民営化・規制緩和万能論の政策を批判し、命と安全への責任を求めてきました。いまこそ国の安全監督行政を大本から立て直すことが求められます。