2007年6月29日(金)「しんぶん赤旗」

主張

社保庁法案

強行採決で年金不安は消せぬ


 安倍内閣と自民、公明の与党は参院の厚生労働委員会で、社会保険庁の解体・民営化関連法案と年金時効特例法案の採決を強行しました。

 五千万件に上る「宙に浮いた年金」の問題で、国民の不安と怒りは収まるどころか、ますます膨らんでいます。コンピューターへの未入力記録が千四百万件も見つかり、共済年金でも百八十一万件の記録が宙に浮いていることが分かるなど、審議のたびに新事実がぼろぼろと明るみに出ています。

 「十分に議論してきた」(安倍晋三首相)などと言える状態ではありません。審議はまったく不十分です。

確実な給付のために

 社保庁関連法案は、国民年金保険料の未納者に対して国民健康保険証を短期保険証に切り替える「制裁」を定めています。二十八日の審議では、「制裁」の対象者が推計で三百四十二万人に上ることが明らかになっています。日本共産党の小池晃議員の質問に社保庁が答えました。

 国民年金と国保はまるきり別の制度です。深刻な生活苦で両方は払えない、せめて命にかかわる国保だけでもと保険料を納めている人に、年金保険料が未納だからと国保で制裁するなど言語道断です。国民からの取り立てには「能力」を発揮しても、国民の財産を確実に管理し支給する点では能力も真剣さもないという本末転倒に国民は怒っています。安倍内閣と与党は、こういう姿勢を根本から改める必要があります。

 「消えた年金」で問われているのは政府の国政運営能力、管理能力の基本であって政治路線以前の問題です。この問題の性格にふさわしく、日本共産党は歴代政府・厚労相の責任を追及しながら、“被害者を一人も残さない”“一日も早く”という立場で具体的、建設的な解決策を提案してきました。だから、政府も頭ごなしに拒否できません。

 年金時効特例法案で時効をなくすだけでは確実な給付の約束にはなりません。日本共産党は参院選の重点政策で「消えた年金」問題を掲げ、「五つの緊急対策」を提起しています。その第一項で「年金保険料の納付記録を、ただちにすべての受給者、加入者に送る」よう求め、二十七日には、この要求を盛り込んだ年金特例法案の修正案を発表しました。

 日本共産党の提案に対して柳沢伯夫厚労相も二十八日、「一億人に納付履歴を通知する。この作業を突き合わせ作業と並行的に行う」と答弁しました。

 これは重要な進展です。建設的な日本共産党の提案が政府を動かしています。ただちに実施するよう強く求めて、さらに追及しなければなりません。

 この問題では、与野党を超えて国民の立場に立ち、問題の一日も早い解決に知恵と力をつくすべきです。

 他党の大臣経験者が一番悪いと「責任のなすりあい」をしたり、現場の労働者にすべて責任を押しつけるなど、選挙目当ての「党利党略」に走っている場合ではありません。

国が徹底して責任を

 一般紙の世論調査でも、年金問題の怒りが「まだ続いている」と思う人が92%を占めています(「朝日」二十六日付)。国民の不安解消のために審議をつくすべきです。強行採決で審議を打ち切り、社保庁の解体・民営化を決めるなど、まったく道理がありません。

 いまこそ国がすべての責任を持って問題の解決に当たる体制が求められています。最悪の責任逃れである社保庁の解体・民営化はやめ、年金不安の解消に力をつくすべきです。



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