2007年6月27日(水)「しんぶん赤旗」

主張

ひき肉偽装

安全な食品供給の原点貫け


 北海道の食品加工卸業者「ミートホープ」が、牛肉のひき肉と偽って、豚肉などを混入させたひき肉を出荷していた問題が、国民・消費者の強い怒りを呼んでいます。北海道警も強制捜査に着手しました。

 業者は長期間にわたって、日常的に偽装を続けていたといいます。国民が口にする食品を偽装し続けるなどというのは、自らの利益のためには手段を選ばない、言語道断の行為です。食の安全を確保する原点に立って、業者の責任はもちろん、監督官庁の農林水産省や北海道庁の責任は徹底追及されるべきです。

食品扱う資格がない

 それにしても、この食品加工業者による偽装の実態は、「ひどすぎる」の一語につきます。

 農林水産省の調査によれば、牛ひき肉といいながら混入されていたのは、豚、鶏、豚の内臓、鴨、羊など、さまざまな肉に及びます。国産といいながら外国産肉を混入させたり、豚ひき肉の発色が悪いと牛の心臓を混入させたりしていたなど、詐欺としかいえない手法もあります。

 業者はひき肉を偽装するだけでなく、大手食品会社「北海道加ト吉」から不当に仕入れた賞味期限切れの冷凍コロッケを期限を偽って販売し、大手鶏肉販売業者の包材を大量に入手して鶏肉を販売するなど、明らかな犯罪としかいえないことまでおこなっていました。これらの偽装や不正な販売を、社長自身の指示で、少なくとも二十年以上前からおこなっていたというのですから、その責任はきびしく指弾されて当然です。企業の社会的責任に反しています。

 食品は国民の毎日の生活に欠かせないものです。しかもこの業者の偽装したひき肉や肉製品は、大手食品会社や生活協同組合を通じて全国で販売されたり、学校給食用に納品されたりしていました。業者の行為は、国民の生命と健康にかかわる食品を扱う業者としての、根本的な資格に欠けるというほかありません。

 近年、BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザの発生に加え、雪印食品(すでに解散)や不二家などの食品会社で偽装や期限切れ食品の販売などが相次ぎ、安全で安心できる食品を求める国民の目はいよいよきびしいものになっています。それにもかかわらず、業者が長期にわたって偽装や不正を続けてこられたというのは重大です。偽装を指示した社長の責任とともに、不正を許した社内の体制や業界全体の体質、さらには何より監督責任のある官庁側の責任にも徹底的な究明と根本的な反省を求めることが不可欠です。

 とりわけ腑(ふ)に落ちないのは、社内の関係者によって一年以上も前に内部告発があったといわれるのに、監督官庁の農林水産省と北海道庁がなんら手を打たず、お互いに責任をなすり合っていることです。内部告発にどう対応したのか、業者との癒着や圧力はなかったのか、行政側は徹底して明らかにすべきです。

消費者本位の食品行政を

 食品行政にとってもっとも重要なのは、食品産業を保護するだけでなく、その食品を口にする消費者の立場に立った行政を確立することです。偽装など食の安全・安心を脅かす事態があとを絶たないなかで、製造段階での安全管理や食品の安全基準などの見直しが迫られてきました。

 にもかかわらず、とくにひき肉などの加工食品は原産地表示もないなど、安全管理はまだまだ不十分です。悪質業者の根を絶つためにも、企業任せにせず消費者本位の食品行政を前進させることが行政の責任です。


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