2007年6月25日(月)「しんぶん赤旗」

韓国 軍事独裁打倒20周年

市民のたたかい継承

釜山民主公園


 韓国南東部の港湾都市・釜山の中心街近くにある小高い山の上に、一九九九年に開館した「釜山民主公園」があります。公園内の民主抗争記念館は、韓国現代史に残る釜山地方の民主化運動の軌跡を展示。軍事独裁を倒した八七年の「六月民主抗争」から二十周年にあたる今年、釜山民主公園は多彩なプログラムを通じて、民主化運動精神の継承を訴えています。(釜山=面川誠)


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 車成煥館長(54)は六月民主抗争の時期、獄中にいました。七九年の「南朝鮮民族解放戦線準備委員会事件」で国家保安法違反に問われ、八八年十二月まで十年間の監獄生活を強いられました。

 この事件について韓国警察庁の「過去史真相究明委員会」は昨年九月、「大規模スパイ事件ではなかったにもかかわらず、政府が危機をつくりだし、メディアが誤報したもの」と発表しました。

今の課題も

 車館長は「私たちは多くの犠牲を出して民主主義をたたかいとった。若い世代にとっては民主主義は与えられたもの。民主化運動の成果を継承すると同時に、雇用や格差の問題など、今後の民主主義に突き付けられた課題についても考えてほしい」と願っています。

 若い世代への継承は、そう簡単ではありません。展示担当の趙哲賢さんは「独裁の弾圧を強調する展示にすると、怖さで泣きだしてしまう子どももいる。いちばん難しいのは朴正熙大統領(在任、六三―七九年)をどう説明するかだ」と言います。「民主化運動を弾圧した独裁者だったと言うと、高齢者の多くは反発する。わが国を貧困から脱出させた偉人じゃないかと。民主主義に反対する人はいないが、民主化の歴史を共有することは容易ではない」

 民主化二十周年にあたって公園が訴える課題は四つです。朝鮮半島の平和体制構築、グローバル化のなかの新自由主義の克服、二〇〇〇年の南北共同宣言の実践、「保守・守旧勢力」の退場―。

強い自負心

 釜山の人々は、民主化運動で全国的に先駆的な役割を果たしたという強い自負心を抱いています。不正選挙で政権延長を図った李承晩大統領を下野させた六〇年の「4・19革命」。朴正熙政権末期の七九年十月の「釜馬民主抗争」。六月民主抗争では、全国の運動が小康状態となった六月中旬、数十万人規模の行動が続きました。

 釜山のたたかいを主導した「民主憲法争取国民運動釜山本部」の常任執行委員長が、現在の盧武鉉大統領(60)でした。盧氏は八一年、「釜林事件」の弁護を引き受けたことをきっかけに人権弁護士として活動を開始します。釜林事件は、社会科学の読書サークルに参加した釜山大学生など二十人以上が「共産主義者」として国家保安法違反で起訴された事件です。

 釜林事件で投獄された一人が、「国民運動釜山本部」事務局長となる高浩錫氏(51)。かつての被告と弁護人が六月民主抗争で同志になりました。高氏は、独立運動家・金九の肖像画を売り歩いて活動資金集めに奔走していた盧氏の姿をよく覚えています。

 現在、中学で英語を教える高氏は、盧政権の支持率の低さを残念に思っています。「民主主義と自由がいかに大事か、私も盧大統領も身に染みて分かっている。盧政権が韓国民主主義の進展にどう寄与したか、歴史が判断するだろう」


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