2007年6月23日(土)「しんぶん赤旗」
主張
イラク特措法延長
国際的無法から手を引く時だ
自民・公明両党が日本共産党などの反対を押し切り、イラク特別措置法を二年延長させたことにより、航空自衛隊は二〇〇九年七月末までイラクで米軍作戦のための空輸支援を続けることになりました。
アメリカのイラク侵略とその後の軍事占領に伴うイラクの混乱は、軍事力だけでは解決できないことが明確になっています。事態の改善には米軍・多国籍軍の撤退しかないという声がいまや国際社会の大勢です。アメリカいいなりに自衛隊派兵を延長し米軍支援を続けるのでは、日本は孤立を深めるだけです。
事態は悪化の一途
アメリカは二月以来、軍隊を増派し軍事占領に反対する勢力を一掃する大規模な軍事作戦を実施しています。しかし、イラクの事態は悪化の一途をたどるばかりです。
米軍の攻撃や宗派間対立などによってイラク市民の死者数は、四月が約千五百人、五月はさらに増えて約二千人にのぼります。米軍兵士の死者も二〇〇三年三月の開戦以来三千五百人を超えました。イラク内外のイラク避難民は四百万人を超えます。軍事力を増強すれば事態を好転させることができるというのはブッシュ政権の大きな思い違いです。
一般住民を無差別に殺りくする米軍の軍事作戦は、イラク市民の恨みを増大させています。バグダッド北西にある町では、米軍攻撃ヘリが中学校を爆撃し、試験中の生徒七人の命を奪いました。こうした市民の犠牲を顧みない米軍の作戦にイラク市民が憤るのは当然です。市民は米軍を撤退させるためなら武力による抵抗もやむをえないとの思いを強めています。それがテロ勢力につけいるすきを与えることにもなっています。イラク情勢を改善するには、米軍が撤退する以外に道はありません。
イラク国民議会は、イラク政府が国連にたいして占領軍の駐留延長を要請するときには議会の承認が必要とする法案を過半数の賛成で可決しました。すでに議会定数(二百七十五人)の過半数(百四十四人)が米軍撤退の行程表を求める請願書に署名しており、アメリカの思うように来年一月以降の米軍駐留の延長ができるかどうかわかりません。イスラム教スンニ派とシーア派の聖職者百人以上が「イスラム聖職者連合」を設立し、「米軍占領の終結」を呼びかけたこともイラク市民の米軍撤退要求の強さを示しています。
アメリカ議会でも、民主党がこんどは二〇〇八会計年度国防権限法案のなかに米軍撤退の期限をもりこむ準備を進めています。
安倍政権と自公両党が、イラクやアメリカの動向を無視して自衛隊のイラク駐留を二年延長したのは、多国籍軍から軍隊を撤退・縮小させる国が相次ぎ、国際社会から孤立を深めているブッシュ政権を助けることしか眼中にないからです。こうした異常な対米追随姿勢では日本は国際社会から信頼を失うだけです。
違憲・違法な派兵やめよ
イラク攻撃はアメリカが国連安保理事会の承認もなしに始めた国連憲章違反の侵略戦争です。憲法で戦争を放棄した日本が支援するのはそもそも許されていません。しかも航空自衛隊が激戦地のバグダッドに米軍兵員・物資を輸送するのは、政府でさえ憲法違反を認める「武力行使と一体」の活動です。「輸送機が飛んでいるところは非戦闘地域」(十九日久間章生防衛相)などという政府の詭弁(きべん)は通用しません。
違憲・違法なイラク派兵をただちにやめることがいよいよ重要です。
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