2007年6月17日(日)「しんぶん赤旗」
主張
棄民政治を問う
雇用と福祉に安心と尊厳を
“ネットカフェ難民”という言葉に象徴されるように、社会的弱者を行政が見捨てて生きてゆけなくする「棄民政策」ともいうべき深刻な事態が広がっています。これに抗して、憲法が保障した生存権を守れ、のとりくみが、住民税増税の押し付け反対、年金不安の解消を求めるたたかいとともに起こっています。
母子加算廃止の中止を
たとえば四月から実施された生活保護の母子加算の減額にたいして「耐えられない」と都道府県知事に審査請求した母親が、全国生活と健康を守る会連合会の調査で百四十五人にのぼっています(十四日発表)。
十五歳以下の子どものいる一人親の生活保護世帯に支給されている母子加算(月約二万円)は、育ち盛りの子どもを育てる家庭にとって命綱です。今年度から三分の一ずつ削減し、〇九年度には全廃する政府の方針は子どもの将来に重大な影響を与えかねません。「汗をかいて帰ってくる子どもに毎日お風呂に入れてやれないことはつらい」「修学旅行をあきらめさせなければならない」など身につまされる訴えばかりです。
政府は、母子加算の廃止の理由を、「生活保護を受けている母子家庭と、受けていない母子家庭の公平性の確保のためだ」(安倍首相)といいます。しかし、「公平」をいうなら、収入が一般世帯の四割にもならない母子家庭の暮らしの水準こそ引き上げる必要があります。一人親家庭に支給されている児童扶養手当の切り捨てなど絶対にやってはなりません。
母子加算の廃止の影響は、受給世帯にとどまりません。母親たちが訴えているように、「低いほうへ、低いほうへ」と、生活水準を切り下げていくやり方は、国民生活の最低水準をほりくずすものです。
いま衆院で審議中の最低賃金法の改定案は、地域別最低賃金の決定にあたって、「生活保護との整合性に配慮する」ことを盛り込んでいます。現在、地域別の最低賃金は平均で時給六百七十三円であり、フルタイムで働いても月額十一万五千円程度です。時給千円以上を目標に抜本的に引き上げ、全国一律の制度とするのは当然です。ところが、政府は、“大幅に引き上げる”とは絶対にいわないのです。
母子加算の廃止など生活保護水準の引き下げは、「生活保護との整合性」という最低賃金改定にも重大な影響を与えます。
生活保護をめぐっては、暮らしに困って窓口にきた人を申請させずに追い返す違法なやり方が当たり前のように行われています。政府は、七十歳以上の高齢者への老齢加算の廃止(〇六年度)、母子加算の縮小・廃止につづいて、生活保護の柱である生活扶助基準の引き下げをもねらっています。
弱者が生きていけないような社会であっていいのかが問われています。人間としての尊厳も奪われ、まともに生きていく最低限の条件も奪われる人々を生み出す政治をこれ以上つづけさせてはなりません。
憲法の生存権生かして
福祉でも雇用でも、人間としての尊厳が守られ、安心感をもてるようにしてほしいと、国民は願っています。すべての国民が、「健康で文化的な最低限度の生活」をする権利をもち、水準の引き上げを国の責任と定めた憲法二五条は、その保障であり、力強い味方です。
日本共産党は、国民の苦難を解決するために全力をつくすという「立党の原点」にたち、生存権保障をかかげてがんばります。
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