2007年6月15日(金)「しんぶん赤旗」

主張

トンネルじん肺

「なくせ」実現への大きな前進


 「あやまれ、つぐなえ、なくせ じん肺」を合言葉にたたかわれてきた全国トンネルじん肺根絶訴訟が、勝利和解に向け動きだしました。

 これまでかたくなに責任を認めてこなかった国が、原告の求める新たなじん肺防止策を進め、和解による解決を目指すことを表明しました。

人間回復のたたかい

 「じん肺」は、多量の粉じんを長期にわたって吸い込むことで起きる職業病です。肺が黒く固まり、呼吸ができなくなります。いまの医学で治癒は不可能で、重くなれば横になって寝ることも、風呂にも入ることもできず、酸素吸入にすがって一生を終えるという悲惨さです。

 原告の患者は「坑夫」と呼ばれた元トンネル建設労働者です。一つのトンネル工事を仕上げてはまた次の仕事へ転々としながら、国策で行われた各地のトンネル工事を支えてきた人たちです。激しく粉じんの舞う坑内で、二直二交代(一日拘束十一時間実働十時間)が当たり前の過酷な労働条件で長年働いたあげく、多くが五十代の若さでじん肺になり、仕事も失いました。

 一人ひとりばらばらにされ、絶望の淵(ふち)にあった患者たちが出合ったのは、多様な正規と不安定雇用の労働者が集まる全日本建設交運一般労働組合でした。組合の健康相談会などで自分の病気が労働災害であり、国と企業が労働者へのじん肺教育を怠り、何の粉じん対策もとっていなかったことを知ったのです。

 二〇〇二年十一月、患者らが国の責任を問い、東京地裁に提訴しました。訴訟は十一地裁、原告九百六十人に広がります。それは「この苦しみは自分たちを最後に」と願う患者、家族の人間回復のたたかいでした。

 昨年七月から今年三月にかけ五地裁で出た判決は、いずれも国のじん肺防止策のあり方を断罪しました。とくに建設現場の作業環境管理の大前提である粉じん測定と結果評価の義務付けを怠ってきた国の責任を共通して認めたことは重要でした。一九九七年からのゼネコンを相手どる訴訟で相次ぐ勝利和解をかちとり、「あやまれ」「つぐなえ」をほぼ達成してきた原告の最大の願いは、国の法整備によって「なくせ」を実現することだったからです。

 日本共産党は国会で、作業現場の過酷な実態をくりかえし告発し、国の責任で労働条件と作業環境の改善への実効ある措置をとることを強く求めてきました。

 裁判での五連敗という結果にもかかわらず控訴を重ねた国の態度は、じん肺垂れ流し政策への居直りともいうべき許しがたいものでした。それを今回の方針転換へとすすめたのは、原告らの道理ある主張、社会的な運動と世論の力でした。

 政府は今後の和解交渉で、原告が受けた被害の深刻さ、歴史と経過をふまえ、原告の意を最大限くむ立場に立つこと、実効あるじん肺根絶対策を早期に実現する責任があることを肝に銘じるべきです。

働く者の命守る政治を

 トンネルじん肺訴訟のように、国が負ける裁判が相次いでいます。共通して裁かれたのは、企業などの活動を規制すべき行政権限を行使しなかったことです。その根源に、財界の利益優先で、国民の命と健康を二の次にする政治があります。

 いまも多くの働く現場、地域で、新たな、大きな問題が次々と生じています。私たち国民の連帯したたたかいの力で働く者の命を守り、政治を大本からただしていくことが、ますます大切になっています。


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