2007年6月13日(水)「しんぶん赤旗」

学校教育法改定案

消えた「男女平等」

徳目に「戦前」色


 参議院で審議中の教育三法案は、改悪教育基本法の具体化が目的ですが、安倍首相の「戦後レジームからの脱却」=戦前回帰の色がいっそう濃いものになっています。

 三法案の一つ、学校教育法改定案は、改悪教育基本法に盛り込まれた徳目の育成を学校で実際に行わせるためのものです。改悪教育基本法で並べた「国を愛する態度を養う」などを明記しました。

国民の批判かわす

 一方で、改悪教育基本法の徳目にさえ盛り込まれていた「男女の平等」などは消えています。

 もともと改悪教育基本法の徳目に「男女の平等」が入ったのは、男女共学の条項そのものを削除したことへの国民の批判をかわす役割がありました。学校教育法改定案ではその本性をあらわす形となりました。

 この背景には、安倍「教育再生」の応援団である「美しい日本をつくる会」が、「男女共同参画社会基本法」の廃棄を求めるなど、男女平等への敵視の動きがあります。

 「個人の価値の尊重」なども、たとえ改悪教育基本法に並べられた徳目であっても、学校教育法改定案からは排除されています。

 学校教育法改定案の「義務教育の目標」の“特異性”はもう一つあります。中央教育審議会(中教審)の答申(三月十日)が求めていた「国際協調の精神」を入れなかったことです。

 現行の学校教育法には、小学校や中学校の教育の目的を実現するための目標として、「郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養うこと」と明記されています。これは、改悪前の教育基本法や憲法の精神にもとづくものですが、改悪教育基本法を受けた中教審でも、「国際協調」を否定することはできず、「我が国と郷土を愛する態度」とともに「国際理解及び国際協調の精神」を盛り込むよう答申しました。

「国際協調」さえも

 教育にかかわって「国際理解と国際協調の精神」を重視することは、政府も強調していることです。一九八二年に歴史教科書についての官房長官談話が出され、その具体化として、文部科学省(当時・文部省)は、教科書検定基準に「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」という条項を設けています。

 これらの経過からも、「国際協調の精神」を外す道理はありません。

 改悪教育基本法は小泉内閣が国会に提出し、安倍内閣のもとで強行成立し、その具体化がはかられています。戦前・戦中の国家体制を「美しい」と美化する「靖国」派が大多数を占める安倍内閣のもとで、過去の侵略戦争への反省をあらわす「国際協調の精神」や男女平等が削られていくことは、特異な価値観の肥大化として、きわめて危険です。それは国民との矛盾をさらに広げざるを得ません。

表


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