2007年6月10日(日)「しんぶん赤旗」
主張
サミット閉幕
軽重が問われる首脳の約束
ドイツ北東部のハイリゲンダムで開かれた主要八カ国首脳会議(G8サミット)が、政治・安全保障をふくむ議長総括と世界経済にかんする首脳宣言をだして閉幕しました。
今回の会議で最大の議題になった地球温暖化防止について、首脳宣言は、二〇五〇年までに温室効果ガスの地球的規模の排出を「少なくとも半減」することを「真剣に検討する」と明記し、国連の枠組みでの交渉を確認しました。しかし、排出規制の基準年など具体的な数値目標の設定は今後の課題です。
地球規模の緊急課題
サミットの焦点は、最大の温室効果ガスの排出国であるアメリカを国連の地球温暖化防止の枠組みに参加させることができるかどうかでした。各国との協議を通じてアメリカが地球規模の温室効果ガスの排出を五〇年までに半減させることを「真剣に検討」することを約束したことは重要です。とくに、京都議定書から離脱したアメリカが、国際社会の声に押されて国連の枠組みに復帰したのは温暖化防止のとりくみにとって貴重な前進です。
今年十二月のインドネシアでの会議を皮切りに温暖化防止の新たなとりくみがはじまります。アメリカは数値目標を義務付けた京都議定書づくりに参加しながら、その後離脱した誤りを再びくりかえすことがあってはなりません。サミットでの約束にそって、排出量の「半減」に向けた実効あるとりくみが必要です。
国連の「気候変動に関する政府間パネル」が温室効果ガスの排出量を五〇年までに半減する必要があると報告したように、地球温暖化防止は待ったなしの課題です。〇九年までに京都議定書に続く新しい合意づくりに向けてサミット参加国は首脳会議の合意を実施するため、具体化を急ぐ責任があります。
サミットは温暖化問題のほかにもテロ、イランなど外交・安全保障の諸課題をとりあげていますが、問題なのは、国際社会がつよく求めている核兵器廃絶の課題については一言もせず、イラクの事態については米軍撤退の方向さえ議論しなかったことです。
イラクの事態は、イラクが大量破壊兵器をもっているとうそをついて米英が先制攻撃した侵略戦争によるものです。国連安全保障理事会の容認決議もないのに武力行使をしたことは国連憲章違反です。ところが議長総括はイラクの事態について、「テロリズム行為」「宗派間暴力」を「非難」しただけです。イラクを悲惨な状況にしているのが米軍の軍事支配にあるという実態に目をつぶっているとしかいいようがありません。
イラク国内はもちろんアメリカ議会からでさえ、期限を切った米軍の撤退を求める声が大きくなっているというのに、首脳会議がまともにとりあげることもできなかったというのは、この問題のサミット参加国にとっての重大さを逆にうきぼりにするものとなっています。
日本政府の責任
安倍首相は五〇年までに温室効果ガス排出量を半減するという日本の主張が取り入れられたと自賛します。しかし、安倍首相は京都議定書が義務づけたような数値目標に反対しているアメリカに、拘束力のある目標設定をせまったわけではありません。
安倍首相が「主張する外交」を口にするなら、アメリカのいいなりの姿勢を改め、世界の課題にこたえる外交的努力をつくすかどうかが問われます。