2007年6月9日(土)「しんぶん赤旗」
鼓動
サッカー 統一協会主催のピース杯
破格賞金は霊感商法?
「2007ピースカップコリア」――。日本では聞きなれない韓国の国際サッカー大会は、Jリーグの清水エスパルスの参加表明で、その“知られざる”実像が浮かび上がってきました。
2003年から2年に一度、南米、欧州のクラブを集めて開かれている同大会は、集団結婚式や霊感商法で社会的に批判を浴びる宗教法人世界基督教統一神霊協会(統一協会)が事実上、主催しています。
正式な大会主催者は、「鮮文(ソンムン)平和サッカー財団」。これはその名の通り、統一協会教祖の文鮮明が設立したもの。財団理事長は同協会ナンバー2の郭錠煥という人物です。「ピースカップコリア」自体も、「心情文化平和世界のための一連の活動」(統一協会月刊機関誌『ファミリー』2003年8月号)と文鮮明自身が語っている通り、まさに、統一協会による、統一協会のための大会です。
異常なのはその賞金額です。総額(03年大会)は1000万ドル(約12億円)。優勝賞金は今回も200万ドル(約2億4千万円)と巨額です。年末に国際サッカー連盟(FIFA)が主催する世界クラブ選手権の優勝賞金450万ドル(5億4千万円)と比べても、破格といっていいものです。
問題は、この大会運営を支える資金の出どころです。
統一協会は「先祖の供養」などとして、つぼや印鑑を不当に高い金額で売りつける霊感商法を、いまも続けています。この商法は裁判でも違法と指摘され、損害賠償を命じる判決も多い。その被害金額は、全国霊感商法対策弁護士連絡会に持ち込まれたものだけで、20年間に963億円に上っています。
同連絡会では「霊感商法をやっているのは日本だけ。韓国ではできない」とし、「これら(ピースカップコリアの賞金など)の資金のほとんどは、日本の善良な市民から違法に奪い取ったもの」と指摘しています。
つまり、霊感商法による日本の被害者の犠牲の上に、この大会が運営されているのです。そういう大会に、Jリーグのクラブが出場する――そのことへの見識が、いま問われています。
実は、統一協会のスポーツ界への進出はこれにとどまりません。その豊富な資金を背景に、韓国プロサッカーリーグ(Kリーグ)の城南一和をつくり、そのオーナー職に協会ナンバー2の郭錠煥が就いています。さらに現在はKリーグの会長にまでおさまっています。
教祖の文鮮明はこう語っています。「今から、オリンピック大会も、FIFA(国際サッカー連盟)も、サッカー競技も、わたしの手で消化(主催するの意)するでしょう」(『ファミリー』(03年9月号)
彼らの組織の権威を高めるため、スポーツの利用価値がいかに大きいかを物語っています。
日本サッカー協会は、フェアプレーを試合の中だけでなく、社会に生かしていくための「行動規範」を持っています。
「社会の一員として、責任ある態度と行動をとる」「スポーツの健全な発展を脅かす社会悪に対し、断固として戦う」
統一協会は、表向きは宗教の看板を掲げてはいるものの、実態は霊感商法に代表される反社会的なカルト集団です。その団体が主催する大会への参加は、この面からも再検討されるべきです。(和泉民郎)