2007年6月8日(金)「しんぶん赤旗」
イラク多国籍軍
駐留延長 議会で承認必要
法案可決 撤退求める世論反映
【カイロ=松本眞志】イラク国民議会は五日、政府が多国籍軍の駐留期限の延長を国連に要請する前に議会の承認が必要とする法案を、過半数の賛成で可決しました。現地では、「占領軍撤退を求める国民の声が反映した」と受け止められています。
イスラム教シーア派与党連合統一イラク同盟サドル派のルバイエ報道官は現地メディアに対し、法案は「イラク占領軍の駐留期限に関する全権限を国民議会に委ねるものだ」と説明。出席した議員百四十四人中、八十五人が賛成し、マリキ首相を含む五十九人が反対したと述べています。
大統領評議会(大統領と副大統領二人)が法案に拒否権を行使した場合、最終的に議会が五分の三以上の賛成で可決すれば法案は成立します。
法案はサドル派(三十人)が提出。同派は、議会定数二百七十五のうち五日の欠席者を含め過半数の百四十人から法案賛成の署名を集めたとしています(イラク紙アルラフィダイン六日付)。
国連安保理は昨年十一月、イラク駐留多国籍軍の駐留期限をマリキ政権の要請により今年十二月三十一日までと決定しました。一方で、六月十五日までに駐留期限を検討するとも明記し、イラク側の要請によっては駐留期限の短縮もありうるとしています。
マリキ首相はこの間、多国籍軍の撤退期限を明示することを拒否。これに対してマシュハダニ国民議会議長は「政府が多国籍軍の駐留延長を望むなら、まず議会にかける必要がある」と指摘していました。
イラク国民議会では五月の初め、米軍撤退を求めるサドル派などが中心のイスラム教シーア、スンニ両派、世俗派からなる超党派グループが発足。議会の過半数を占める百四十四人の議員が米軍撤退の行程表をもつよう米国に要求する請願書に署名しています。
イラクの著名な政治評論家ヌーリ・タミミ氏は本紙の電話インタビューに答え、「議会の決定は、占領の終結と占領軍の撤退を求めるイラク国民の声の広がりを反映したものだ」と指摘。「イラクでの『民主主義』の達成を語るブッシュ米大統領は、民主的な選挙で選ばれたイラク議会の決定を尊重しなければならず、イラク政府もこれに拘束されることになる」と述べました。
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