2007年6月8日(金)「しんぶん赤旗」
最賃・社会保障改善めざそう
なくせ!ワーキングプアでシンポ
「なくせ!ワーキングプア(働く貧困層)! 格差と貧困・生存権を問う」をテーマにしたシンポジウムが七日、東京都内で開かれました。中央社会保障推進協議会や全労連、全国生活と健康を守る会連合会、労働総研の主催で、百十七人が参加。生活保護基準の引き下げを許さず、最低賃金や社会保障の改善をめざす方向を探りました。
年金・介護・医療、社会保障の連続改悪と負担増、賃金・雇用破壊によって貧困、格差が拡大、国民生活を困窮化させています。さらに政府は社会保障費を今後五年間で一兆六千億円削減を決定し、生活保護の基準引き下げや全面見直しを推進しようとしています。
シンポジウムは全労連の小田川義和事務局長、全日本年金者組合の森信幸委員長、全生連の辻清二事務局長、中央社保協の山田稔事務局長がパネリストとして発言。進行役は浜岡政好佛教大学教授。金澤誠一佛教大学教授が講演しました。会場からは「日本全体が貧困化している」「共同のたたかいを広げよう」などの発言が続きました。
時給千円以上実現
全労連の小田川義和事務局長は、ワーキングプアの原因に青年の二人に一人まで急増した非正規雇用の問題をあげ、最低限の生活を保障するナショナルミニマムの確立が重要だと強調しました。
最低賃金の全国平均で六百七十三円の時給では、年間二千時間働いても年収は百三十四万円にしかならず、生活保護を下回る水準だと強調。「最低時給千円の実現がワーキングプアの固定化や再生産をさせない勘どころにあり、さらに運動を強めたい」とのべました。
かつて自営業者が中心だった国民年金は、加入者の四割が非正規雇用で占められ、低賃金のために未納者も増えているとし、「雇用の破壊で社会保険制度も揺らいでいる」と指摘しました。
最低年金の保障を
年金者組合の森信幸委員長は、「消えた年金」を生んだ記録管理のずさんさなど現行の年金制度の問題点を指摘。年金者組合が提言する月額八万円(保険料なし)の最低保障年金制度の実現をめざして運動に取り組んでいるとのべました。
運動の到達点として、年金制度の改善を求める意見書は全国の地方議会の41%にあたる七百八十五議会で採択されていると報告。「世論を大きく結集し、地方自治体を巻き込みながら、運動を強める」と語りました。
医療からの排除阻止
政府・厚労省がすすめる医療「改革」の目標・目的は「医療費の削減」だと報告したのは、中央社保協の山田稔事務局長。医療のなかで低所得者の排除、軽傷者の排除、自立支援という三つの排除が進められていると指摘。
「医療費適正化計画」の柱は、療養病床を削減し終末を在宅にふり替える「地域ケア整備構想」、生活習慣病有病者の削減目標を持つ「特定検診・保健指導の義務付け」、七十五歳以上の人を老人保険から分離する「後期高齢者医療制度」にあり、国民に医療費を使わせず診察を控えることを意識づけ、医療費を削減するものだと強調。これを打ち破るには自治体も巻き込んだ共同・連帯の運動が必要と述べました。
共同の力で解決はかる
「貧困問題は論議する段階から、共同の力で解決する課題になってきた」と報告したのは全生連の辻清二事務局長です。
全国に広がる生活保護の老齢加算、母子加算の廃止・削減に反対する生存権裁判の原告が、「一方的に生活費を削るのはあまりにもひどい」「人間らしく生きることはどういうことか」を問い、福祉切り捨てにたいする「防波堤を築きたい」と訴えていることを紹介。「年金よりも生活保護が高い」などと国民間の分断・対立をあおることを許さないために、互いの生活、現実の暮らしを語り、学び、自らそれとたたかおうと決意した人を援助していくことが必要だと強調しました。
自立生活サポートセンター・もやいの湯浅誠事務局長が会場から発言し、「日本全体が貧困化している。安倍晋三首相は再チャレンジというが、安全ネットなしの綱渡りだ」と指摘。貧困を打開するネットワークをつくって共同の運動を広げていくと語りました。
国民生活底上げへ
佛教大教授 金澤誠一さんが講演
シンポジウムでは「ナショナルミニマムの今日的意義と課題」と題して金澤誠一佛教大学教授が講演しました。
金澤教授は、貧困を語り明らかにすることは「貧困の解決を求めてやまない」政策や運動を含むものだと強調。最低賃金闘争、国保をめぐる問題、生活保護の生存権裁判、北九州餓死事件などのたたかいは「貧困化のそれぞれのあらわれにそった抵抗だ。それは、憲法二五条の生存権を守り、ナショナルミニマム(国家が国民に保障する最低限度の生活水準)を勝ち取り、ワーキングプア(働く貧困層)の存在を許さない『最低生活の岩盤』をつくるたたかいといえる。主導するのは労働組合による最賃闘争だ」とのべました。
金澤氏は、現代の貧困は構造的なもので低所得層だけでなく国民一般階層にも広がり多くが未組織状態で孤立化していると指摘。低所得層は現代の資本主義の矛盾をまともに受けている階層であり、組織化は社会変革のかぎだと強調しました。京都総評の最低生計費試算を紹介、「低所得層の生活の底上げが、一般国民の生活の底上げとなる」と語りました。
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