2007年6月7日(木)「しんぶん赤旗」
自衛隊が違憲・違法の国民監視
志位委員長が内部文書公表
“憲兵政治”の復活許さない
日本共産党の志位和夫委員長は六日、国会内で記者会見し、自衛隊の「情報保全隊」による大規模な国民監視活動を詳細に記録した内部文書を独自に入手したとして、内容を公表しました。志位委員長は「自衛隊の部隊が、日常的に国民の動向を監視し、その情報を系統的に収集しているのは動かしがたい事実であり、違法、違憲の行為だ」とのべ、政府に対し、情報保全隊の活動の全容を明らかにし、ただちに監視活動を中止するよう求めました。
TV報道などで反響
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志位委員長が公表したのは、陸自情報保全隊が二〇〇三年十二月から二〇〇四年三月の間に作成した二種類の文書です。計十一部、A4判で総数百六十六ページにおよびます。
記載の内容は、自衛隊イラク派兵反対の運動など、個人や団体による幅広い運動の情報です。いずれの文書も、多数の個人を実名で記載。デモや集会の写真を掲載した文書もあります。
一つ目の文書は、陸自東北方面情報保全隊が作成した「情報資料について(通知)」と題する文書(五部)。東北方面情報保全隊が収集した情報を、週間単位で一覧表としてとりまとめ、分析をくわえています。
二つ目は、陸自情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」と題する文書(六部)です。全国の情報保全隊が収集した、自衛隊のイラク派兵に反対する運動を記録しています。四十一都道府県、二百八十九の団体・個人が「市街地等における反対動向」として記録されています。
「情報資料について」は、自衛隊イラク派兵反対運動に限らず、医療費負担増、年金改悪、消費税増税に反対する運動や「国民春闘」といった運動まで詳細に記録しています。
「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」からは、情報保全隊が自衛隊イラク派兵に反対する運動を監視するために、特別の体制をとっていたことがうかがえます。
志位委員長が紹介した、自衛隊関係者の証言によると「(陸自情報保全隊は)国民的に高まったイラク派兵反対運動の調査を中心的な任務とし、ほかの情報よりも優先して本部に報告する体制をとっていた」といいます。
志位委員長は情報保全隊による国民監視の一例として、イラク・サマワでのジャーナリストの取材活動や日本におけるマスコミの動向、映画監督の山田洋次さんなど著名人の発言、地方議会の動向、国会議員の発言、宗教者の平和活動、イスラム団体の動向についての記述をあげ、「民主主義をくつがえす重大な問題」と強調しました。
そのうえで、自衛隊による国民監視は憲法二一条が保障する集会、結社および言論、出版などの表現の自由を根底から脅かす行為であり、個人名の記載や集会参加者の写真撮影は憲法一三条が保障するプライバシーの権利の侵害だと指摘。こうした活動は「日本国憲法を蹂躙(じゅうりん)した違憲の活動であるとともに、自衛隊法にも根拠をもたない違法な活動」だと批判しました。
軍隊である自衛隊による国民監視は、「戦前・戦中に、憲兵組織が弾圧機関となった暗黒の歴史を今日に復活させようとする許しがたい行為」と糾弾。「闇の部隊の活動を隠ぺい・継続することは許されない。国会で追及していく」とのべました。
会見で、志位委員長は記者団に問われ、文書の信ぴょう性や情報保全隊の活動の違法性について答えました。
志位委員長の記者会見は、六日のテレビやインターネットでのニュースで相次いで取り上げられるなど反響をよんでいます。
HPに全文公開
日本共産党は六日、党中央委員会のホームページに、情報保全隊の内部文書の全文を公開しました。
全容解明し活動の中止を
志位委員長が政府に申し入れ
日本共産党の志位和夫委員長は六日、国会内で鈴木政二官房副長官に対し、同日の記者会見で発表した陸上自衛隊の情報保全隊が作成した内部文書について説明し、全容解明と、こうした国民監視活動の中止を求めました。
志位氏の申し入れに対し、鈴木官房副長官は「官房長官、総理にお伝えし、そのうえで対応したい。初めて見る資料だ」と述べました。
各党を訪れ説明
また日本共産党の穀田恵二国対委員長は同日、自民党、民主党、公明党、社民党、国民新党の国会内の控室を訪れ、内部文書を手渡した上で、国民やマスメディア、政党の活動まで監視対象にしていたことを説明。日本共産党として全容解明と、こうした活動の中止を求めていることを述べました。
自民党は二階俊博国対委員長、民主党は高木義明国対委員長、公明党は漆原良夫国対委員長、社民党は重野安正国対委員長、国民新党は糸川正晃副幹事長が対応しました。
情報保全隊 陸海空の三自衛隊ごとに設置された防衛大臣直轄の情報部隊。主な任務は防衛秘密の保護と漏えい防止とされています。二〇〇三年三月に、それまでの「調査隊」を再編・強化して発足。調査隊では別個だった中央と地方の指揮系統を三自衛隊ごとに統合し、より中央で状況把握、運用が可能になるようにしました。隊員数は陸上自衛隊を主力とし、陸海空の三自衛隊で約九百人とされています。