2007年6月6日(水)「しんぶん赤旗」
イラクのスンニ派とシーア派
聖職者が合同組織
“占領・暴力終結を”
【カイロ=松本眞志】イラクのイスラム教スンニ、シーア両派の聖職者百人以上が四日、首都バグダッドに集まって会合を開き、米軍の占領と暴力の終結、イラク社会の分裂の克服を呼びかける宗派を超えたイスラム聖職者の組織「イスラム聖職者連合」を設立しました。両派による合同組織の設立は初めてです。
宗教問題を担当するアブデルハリム・ザヒリ首相顧問は、会合と新組織設立の目的について、「宗教政党間の対立関係をやめさせ、思想の違いを理由にした抗争や殺人行為を戒めるファトワ(イスラム聖職者による法学判断)を発し、国の改革をこころみるものだ」(汎アラブ紙アルハヤト三日付)と説明しています。
新組織イスラム聖職者連合は、「国民に対し、武装集団や暴徒、誤った悪魔のような謀略を拒否し、イラクの破壊をこころみる過激主義に反対する統一戦線を提示する」と宣言。「聖職者の統一は国民の統一を象徴する」とのスローガンをかかげています。
イラクでは、旧フセイン政権の与党で世俗主義のバース党を米軍が解散した後、シーア派が影響力を持つ新イラク政権が誕生しました。これにスンニ派勢力が反発し、スンニ、シーア派間の対立が生まれ、外国勢力や国外のテロリストが介入して暴力や殺害をともなう宗派間抗争にエスカレートしています。
会合に参加した両派の聖職者たちは、イラクの政治家たちに対して互いの争いをやめて多国籍軍による占領を一日も早く終結させるよう要求。参加したイスラム聖職者協会(スンニ派)のハリド・ムラ師は「われわれは、かつてなかった『誘拐と殺人』という危険きわまる“慣習”によって争っている」と発言し、宗教の名による暴力の悪循環が、アルカイダなど外国人勢力から持ち込まれたものだと主張しました。
ナジャフから参加したシーア派聖職者アハメド・バハドリ師は、一部の聖職者が広めている宗派間の暴力を認める教義について「奇妙なファトワ」だと批判、「誤った理解に基づいて宗教の名で行われてきた犯罪が、イスラム教の聖地への襲撃、公共施設の破壊、公共物の横領へと導いた」と指摘してイスラム教と暴力は本来無縁であると強調しました。
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