2007年6月3日(日)「しんぶん赤旗」
米反核NGOが本出版
“核廃絶に背”米を批判
軍事で安全は保障されない
昨年六月に発表された大量破壊兵器委員会(ブリクス委員長)の報告にこたえるかたちで、米国の反核団体が『核の無秩序か、協調的な安全保障か』と題する本を出版しました。出版にかかわった活動家たちは五月三十一日、米議会で議員スタッフを対象に要点を報告し、核保有国・米国が負う国際条約への責任を強調しました。(ワシントン=鎌塚由美 写真も)
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議会での報告では、執筆・編集に携わったジョン・バローズ全米核政策法律家委員会理事長、ジャッキー・カバソ西部諸州法律財団事務局長、ジェニファー・ノードストームさん=婦人国際平和自由連盟(WILPF)の軍縮プロジェクト「リーチング・クリティカル・ウィル」=らが発言しました。
不誠実と指摘
バローズ氏は、核不拡散条約(NPT)をめぐる交渉過程で米国が関与した合意を紹介し、二〇〇〇年のNPT再検討会議で核保有国が核兵器廃棄に向けた「明確な約束」を行った意義を強調しました。同氏はまた、「あらゆる核の危機を取り除くロードマップ」であるこの合意についてブッシュ政権が「提案にすぎない」(フォード核不拡散担当米特別代表)し、「政治的なものにすぎず、変更可能だなどと述べている」と批判。米国の条約への不誠実な態度を指摘しました。
ノードストーム氏も、軍縮交渉をめぐる状況に触れながら、ジュネーブ軍縮会議での米国の姿勢に言及。十年近く空転が続くなか、今年の会議では、兵器用核分裂性物質の生産禁止(カットオフ)条約の集中討議が行われたことを評価する一方、米国が同条約の「検証は不可能」との立場をとっていることを紹介。「検証可能」との元の立場に復帰し、誠実に交渉を行う姿勢が必要だと報告しました。
問題は数でない
カバソ氏は、核兵器をめぐる議論について「問題は核兵器の数ではなく、何のための兵器か、一発の使用がどのような惨劇をもたらすかの議論が必要」だと強調しました。「安全保障を軍事ではなく、人間と環境の必要にかなうものに再定義する必要がある」と指摘、「健康・医療など一般の国民にとって切実な問題となっている安全保障は、軍国主義では保障されない」と強調しました。
昨年発表された大量破壊兵器委員会の報告では、世界的な有識者が、すべての核保有国に対し「核兵器に依拠しない安全保障の立案を開始し、核兵器違法化の準備を始めるべきだ」と提言しました。
同報告を引用しながら、今回出版された同書は、国際的な枠組みや米国の核兵器に対する履歴、核兵器を取り巻く国際情勢などを解説。「市民社会と変化」と題した一章を設け、核兵器廃絶運動で市民社会が果たしてきた役割に言及し、さらなる運動への提案を盛り込んでいます。
大量破壊兵器委員会の報告 スウェーデン政府の提唱で設置され、世界の有識者十四人が昨年六月、「恐怖の兵器―核・生物・化学兵器からの世界の解放」と題する報告書を発表。すべての核保有国に対し、「核兵器に依拠しない安全保障の立案を開始し、核兵器違法化の準備を始めるべきだ」と提言しました。
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