2007年6月3日(日)「しんぶん赤旗」

主張

再生会議2次報告

これでは教育は悪くなる一方


 政府の教育再生会議が第二次報告をまとめました。「競争とふるいわけ」の教育を助長し、教育への国家統制を強める改悪教育基本法のいっそうの具体化をはかろうとするものです。安倍内閣は、一月の第一次報告に盛り込んだ教育三法改定案の今国会成立をねらい、さらに第二次報告で打ち出した「徳育の教科化」や「授業時数の10%増」について学習指導要領などの改訂を来年三月までに行う方針です。

特定の価値観押し付け

 現行の「道徳の時間」を「徳育」として「教科化」するのは、国が検定する教科書などで特定の価値観を子どもに押し付けるねらいがあるからです。憲法が保障する「思想、良心の自由」に真っ向から反します。マスメディアも、「教科にすれば文部科学省による統制が強まり、微妙な価値観を含む道徳教育が硬直し、画一化する懸念がある」(「日経」二日付社説)と批判しています。

 しかも、政府が押し付ける特定の価値観が復古調であることにも「徳育が昔の『修身』のような授業として復活を目指すのなら、批判は相次ぐだろう」(「東京」同日付社説)ときびしい目をむけています。

 日本共産党の石井郁子衆院議員が国会質問でとりあげたように、過去の侵略戦争を「アジア解放の戦争だった」と賛美する「近現代史教育プログラム」が文部科学省の委託事業として採用され、学校に持ち込まれています。

 「戦争賛美の教育を押し付けるな」という声があがっているように、侵略戦争を支えた戦前型の教育にもどることは許されません。市民道徳の教育は、憲法にもとづき基本的人権の尊重を中心に、自主的にすすめるべきであり、現場の創意工夫がかぎです。特定の価値観をおしつける「徳育の教科化」は必要ありません。

 「子どもが規範を学ぶのは、教室だけではない」(「朝日」同日付社説)との声もあります。「政治とカネ」をめぐり多くの疑惑につつまれた故松岡前農水相の説明責任とかばい続けた安倍首相の態度をあげて、自らの規範を正すよう求めているのです。

 学力保障に一番有効な少人数学級には背をむけて、授業時数一割増で学力向上をめざすというのも納得がいきません。学力世界一のフィンランドの授業時数は、日本より短いのです。教育再生会議の委員からも、授業時数と学力の関係は「実証的に検証されていない」と批判がでており、科学的根拠も示さず提言すれば現場の困難がますだけです。

 報告は柱の一つに「財政基盤」をすえましたが、教育予算を増やすのではありません。「効率化」をあげて差別的な配分に徹しています。「メリハリある教員給与体系」は、上からの評価で給与に格差をつけるもので、教員の目を行政や管理職にむけさせ、子どもとの時間を奪ってしまいます。大学問題では、世界でも異常に高い授業料や貧弱な勉学・研究条件の大本になっている極端に低い大学予算の問題にふれないまま、競争原理の徹底と再編統合をうちだしています。大学の健全な発展の基盤をほりくずすものです。

憲法にもとづく教育を

 教育再生会議が、委員に教育研究者を加えず、マスメディアにも会議を公開していないことに批判が起こり、「会議を公開」し、「教育研究の専門家を置く」よう求める声があがっています。国民の英知をあつめるとともに、改悪教育基本法の具体化ではなく、憲法にもとづく教育に抜本的に転換させていきましょう。


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