2007年6月2日(土)「しんぶん赤旗」

テレビ 「二大政党」報道を問う

隠される真の対決構図


 「年金問題でテレビを見ているが、自民と民主しか映らないじゃないか」。最近、そんな電話が編集局にかかってきます。

解決へ全力で

 もちろん日本共産党は、国民の立場に立って年金問題を解決するため全力で活動しています。「年金時効特例法案」が衆院厚生労働委員会で、わずか四時間の審議で採決された五月三十日、志位委員長はただちに記者会見し、「国の責任を放棄し、被害者である国民に責任を押し付けるもの」と法案を厳しく批判しました。二十九日には小池政策委員長が「消えた年金問題」で「国の責任で解決を」という緊急要求を会見で発表し、柳沢厚労相に届けました。しかし、日本共産党のこれらの行動はほとんど報道されていません。

 なぜか。今、報道をむしばむ二大政党偏向と無関係ではありません。三十日夜のNHKテレビ「ニュースウオッチ9」は「年金記録問題与野党激突」と題し、「消えた年金問題」を特集。まず小沢民主党党首と安倍首相との党首討論、民主議員の委員会追及、強行採決の模様、民主党国対委員長の記者会見と、「与野党」といいながら、絵になりやすい派手な自民、民主対決がすべて。他の党は登場しません。民放もほとんど自・民対決の構図のみの報道です。

 社会保険庁解体法案を含めて年金問題がヤマ場にあるとき、ふたつの政党の行動だけでは国民の知る権利に応えているとは言えません。

「二項対立」に

 放送法は第三条に、放送局が守るべき番組編集準則があります。その二項には「政治的に公平であること」、四項は「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と定めています。AかBかの「二項対立」に単純化することは放送法にも反します。民主党は社会保険庁を解体することでは自民と変わりません。共産党は、それは国の責任を放棄することになり、「消えた年金」の解決にもつながらないと批判しています。二大政党報道は真の対決構図を隠してしまいます。

 その点では松岡農水相が自殺した二十八日の、各党コメントの扱いかたも異常でした。各局夜のニュース番組で日本共産党・市田書記局長の談話を紹介したのはNHKだけでした。民放各局は閣僚、自民、民主、社民などのコメントはほぼ紹介しているのになぜか共産党は、なし。松岡農水相は事務所費、光熱水費問題、緑資源談合疑惑の渦中での自殺、大きな政治事件です。この事件にどう対するかは各党の立場が問われるのです。まして共産党は事務所費でも、緑資源談合でも、疑惑追及の口火を切った党です。その党のコメントを伝えない。不公平、不見識ではないかという声が放送局にも、赤旗編集局にも寄せられました。視聴者の声もあり政党の扱いについては一部是正されました。

 NHKと日本民間放送連盟が定めた「放送倫理基本綱領」は「放送の公共性を重んじること」「国民の知る権利に応えること」をうたっています。公共とは多くの意見を抱え込んだ空間です。その意見を無視することは知る権利に応えたことにはなりません。

意見を届ける

 テレビは政治報道で多くの偏向を犯してきました。先の郵政解散選挙では、郵政民営化か、抵抗勢力かの二項対立を、刺客とかホリエモンとかを追いかけながら興味本位にあおり立て、小泉劇場の一翼をにないました。

 参院選を目前に、以前の轍(てつ)を踏まないためにも、視聴者は番組を見つめ、おかしいときは大いに放送局に意見を届ける必要がありそうです。(荻野谷正博)


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