2007年6月2日(土)「しんぶん赤旗」

主張

政治とカネ

「すり替え」で「幕引き」許せぬ


 自民、公明両党が、事務所費疑惑の再発防止策だと、政治資金規正法「改正」案を国会に提出しました。

 疑惑の渦中にある現職閣僚の自殺という前代未聞の事態が起きたというのに、すでに敷かれたレールの上を走り去る暴走列車のように、真相の解明を拒み、法制度いじりの問題すり替えに逃げ込もうとする安倍内閣と与党には、なんの反省も、責任の自覚もみられません。

反省も責任もなし

 自殺した松岡利勝前農水相の事務所費問題での疑惑は、現行政治資金規正法にも違反する支出の虚偽報告をしたという疑いです。「なんとか還元水」答弁に国民の怒りが集中するなかでも、事実の解明を求めず、「法にのっとり適正に報告されている」とかばい続け、規正法「改正」論議でお茶を濁して、疑惑の幕引きをはかるという手法は、安倍晋三首相がリードしてきたものでした。

 しかも、自公が提出した「改正」案は抜け穴だらけのザル法です。対象は資金管理団体だけ、「五万円以上は領収書添付」といっても小口分散が可能で、政治家の側が資金の使途を隠そうと考えれば、いまと同じく何の不都合もありません。もともと世論対策の方便でしかないから、実効性など問題ではないのです。

 松岡氏の自殺という新たな重い事実があっても、それが既定の方針だと、こんな法案を持ち出すやり方は許されるものではありません。

 多くの国民はいま、「自殺するほどの大問題があったのか」と驚いています。そして、問題が死によって封印され、政治の闇がいっこうにはれないことに、不信とやりきれなさを募らせています。

 だからこそ、自殺の背景、疑惑の真相解明を、底をつくところまで行う強い決意を示すことが、内閣の最低限の責任のはずです。

 「人の命、身の処し方を外からうんぬんする立場でない」と政府が国民に説明する必要性を否定した塩崎恭久官房長官、「彼なりの責任の取り方であった」と松岡氏をかばう甘利明経産相、「任命責任とかそういうことはない」と安倍首相を免罪する久間章生防衛相など、閣僚の発言は国民の感覚とかけ離れたものです。公明党の冬柴鉄三国交相は「規正法改正を遂げ国民が納得する報告ができるようにしなければならない」と、すり替え路線を先導しています。

 安倍首相は松岡氏自殺の直後、「慙愧(ざんき)にたえない」とのべました。本来「恥じ入る」という意味です。首相は何を恥じ、どうしてその恥をそそぐつもりなのでしょうか。

 「政治とカネ」で疑惑の人物であり続けた松岡氏を閣僚に任命し、倫理の筋道より政権維持の思惑を優先して疑惑大臣をかばい続けたことを恥じ、それを断ち切る真相解明に踏み出さないかぎり、国民の理解は得られないことを知るべきです。

腐敗政治断ち切るとき

 安倍内閣では昨年末、佐田前行革相が政治資金収支報告書の虚偽記載疑惑で辞任しましたが、その後、国民にはなんの説明もありません。民主党も、角田義一前参院副議長の違法献金疑惑をはじめ、数々の問題で説明責任を果たしていません。

 疑惑が生じたときに、一つ一つの問題をあいまいにせず、国民の批判を仰ぐ姿勢が欠けているから、政治家の倫理崩壊が続いてきたのです。

 「辞めれば終わり」「自殺すれば終わり」ではすみません。「すり替え」で「幕引き」をまたくり返すようでは、腐った政治をただすことなどいつまでたってもできません。


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