2007年5月31日(木)「しんぶん赤旗」

主張

野球特待生問題

立ち止まって、考えるとき


 高校球児の特待生制度はどうなるのか、廃止されたら「特待生」は救済されるのか、いま、高校野球のあり方ともかかわって、制度のゆくえが問われています。

 事の発端はプロ野球球団による「裏金」問題です。日本高等学校野球連盟(高野連)が特待生制度を「裏金の温床」とみて、実施校に罰則を加え、つよく廃止を求めたことから、事態はこの制度の正否をめぐる問題へと拡大していきました。

教育としての野球が原点

 高野連の廃止の理由は、特待生制度が金品の授受を禁じた「学生野球憲章」に抵触することでした。長い歴史のなかで「裏金」問題などにさらされてきただけに、「憲章」の精神を堅守するのは大事なことです。「野球」を名目にして高校生を特別に処遇する、特待生制度の是非を問題にするのも分かります。

 しかし、高野連の調査でも三百七十六校がこの制度を実施し、「特待生」は七千九百七十一人にのぼるという現実がありました。一律に廃止を求めれば、事態が混乱するのも当然です。「いったい球児たちはどうなるのか」との不安が拡大し、実施校からは「私学の命綱を奪うものだ」との反発が起きました。

 こうした経過からいっても、この問題の解決には必要な時間をかけて議論し、ていねいに対処していくことが求められます。重要なのは、高野連も実施校も「教育としての高校野球」の原点に立ち返って協調し、事態の打開に力を注ぐことです。

 特待生制度が抱えている問題点にメスを入れることは避けて通れません。とりわけ、この制度が「選手獲得の手段」となっている点です。実態調査でみると、平均すればひとつの野球部の「特待生」が二十人を超えます。ベンチ入りする選手全員が「特待生」という数値に相当します。

 「特待生」の枠が実施校の裁量に任されて“採りたい放題”になっており、選手の獲得合戦は激化するばかりです。なんの制約もない制度には歯止めをかけるべきです。

 現在、善後策で奨学金などの制度に移行できた「特待生」は、全体の49%(読売新聞の調査)にとどまっています。半数以上も救済措置がとれていない要因のひとつには、無基準な「野球枠」があるといえるでしょう。

 考えなければならないのは、「特待生」が学費の免除と生活費を保障されることで、野球部に身柄が全面的に拘束されることです。病気やケガで野球ができなくなれば、学校をやめざるを得なくなるという事態も生じます。これでは教育的な配慮を欠いているといわざるを得ません。

 教育の奨励のために設置される本来の支援制度から、現在の制度がズレているところに大きな問題があります。教育の枠外に置かれれば、高校球児の人格形成をゆがめ、「野球も金しだい」との風潮がはびこるばかりです。そこにつけ入って「裏金」などの“黒い手”が伸びてくるのも予測に難くはありません。

高校野球の健全な発展を

 教育にふさわしい要件を備えた制度に改変できるのか、それが問われています。高野連と学校関係者がここに議論をすえて、制度の改革をすすめてもらいたいものです。

 同時に、検討の内容や課題をひろく国民に投げかけ、いっしょになって健全な発展を探求していくことも重要です。この共同が前進するなかで、球児たちが元気をとりもどす環境を整え、近づく夏の甲子園大会を迎えたいものです。


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