2007年5月29日(火)「しんぶん赤旗」

主張

松岡農水相自殺

究明を終わらせてはならない


 政治資金団体の事務所費問題や緑資源機構の官製談合事件で疑惑の渦中にあった松岡利勝農水相が、東京・赤坂の議員宿舎で自殺を図り、搬送先の都内の病院で死亡が確認されました。現職の大臣の自殺は、戦後初めてです。

 自殺の詳しい原因などは明らかにされていませんが、事務所費問題や官製談合事件など、「政治とカネ」問題との関連が推測されます。自らにかけられた疑惑について松岡氏は説明責任を果たしませんでした。自殺で問題を一件落着とはせず、司法当局の捜査や関係者の証言などで、徹底究明することが求められます。

疑惑解明は政治家の責任

 自らいのちを絶つという事態はまことに痛ましいものですが、政治家の責任としてまず求められるのは、自らにかけられた疑惑を自ら解明することです。衆院の政治倫理綱領で「疑惑を持たれた場合には、自らそれを解明し、その責任を明らかにする」とあるのもそのためです。

 その点で、松岡氏が政治家として疑惑解明の責任を果たさず、自殺の道を選んだとすれば、残念至極というほかありません。

 松岡氏には、家賃や電気・水道代が一円もかからない議員会館の自室に政治団体の「主たる事務所」を置きながら、数千万円単位の事務所費や光熱水費を支出したと政治資金収支報告に届け出、虚偽報告や表に出せない用途に使ったのではないかとの疑惑が指摘されてきました。

 松岡氏は虚偽報告ではないといいながら、実際何に使ったのかの説明を一切拒否してきました。政治資金収支報告は、入りについても出についても透明にし、国民の監視と批判のもとで政治家の倫理をただしていくのが趣旨です。松岡氏の態度がこれに反していることは明白であり、保管が義務付けられた帳簿などにもとづき説明責任を果たすことが関係者の責任です。

 松岡氏には公正取引委員会が告発し、東京地検特捜部が捜査を進めている緑資源機構の官製談合事件をめぐっても、疑惑が指摘されてきました。緑資源機構がかかわった林道などの事業に関係する団体から一億三千万円もの政治献金を受け取っています。とりわけ、緑資源機構が松岡氏の地元・熊本県などでおこなっている「特定中山間保全整備事業」の工事発注などをめぐっては自身の関与も伝えられ、一部の報道では捜査が松岡氏の周辺にも及びつつあるといわれていました。

 この問題でも松岡氏は、なんら疑惑解明の責任を果たしていません。大半が国の補助金でまかなわれる緑資源機構からの発注は、国民の血税の使い道にもかかわります。松岡氏がその発注に影響力を行使し、不当な利益を受けていなかったか。疑惑の解明は、捜査に当たる検察当局はもちろん、農林水産省など政府そのものの責任です。

問われる首相の任命責任

 とりわけ重要なのは、任命権者である安倍首相自身の責任です。安倍首相は、“疑惑のデパート”とまでいわれた松岡氏を、「靖国派」の同志の一人として閣僚に起用しました。事務所費問題でも首相は、松岡氏の説明をうのみにし、一切解明の責任を果たそうとはしませんでした。

 安倍首相が松岡氏を閣僚に起用せず、任命権者としての責任を果たしていれば、松岡氏も自殺しなくてすんだとまではいいません。しかし、松岡氏の自殺で安倍首相が疑惑にほおかぶりするなどというのは、絶対あってはならないことです。


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