2007年5月28日(月)「しんぶん赤旗」

軍幹部養成 派遣中止へ

米での訓練 中南米で4国目

コスタリカ


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 コスタリカ政府はこのほど、米国のラテンアメリカ軍幹部養成機関への訓練生派遣を今後は中止すると発表しました。

 この機関「西半球安全保障協力研究所」(WHINSEC)は、前身である「スクール・オブ・アメリカス」(SOA)時代を含め、六万人をこえる卒業生を送り出し、各国軍部内に親米派を組織する役割をになってきました。コスタリカの派遣中止決定は、ベネズエラ(〇一年)、アルゼンチン(〇六年)、ウルグアイ(〇六年)についで四カ国目。

 コスタリカは現政権下でも、経済、安全保障分野では米国と現在も緊密な関係をもっており、今回の決定は、いわゆる「親米国」にも広がる「米国離れ」として、とくに注目されます。

 今回の決定は、五月十六日、WHINSECとSOAの人権侵害を追及し、機関の閉鎖を求めている民間団体「SOAウオッチ」の代表と会見した同国のオスカル・アリアス大統領が表明したものです。

 「SOAウオッチ」の代表として同席したリサ・サリバン氏によると、アリアス大統領は、「この学校(WHINSEC)を閉鎖するためには何をしなければならないのか」と質問。サリバン氏が、コスタリカが訓練生を派遣しなければ、非常に積極的な影響を与えるだろう、と説明したのにたいし、大統領は「そうするだろう」と応じました。

 コスタリカは「軍隊」がないため、実際に、WHINSECに派遣されるのは警察官です。「SOAウオッチ」によれば、これまでにSOAやWHINSECを卒業した警官は約二千六百人。現在は、三人の警官が在籍中です。アリアス大統領は、「三人の警官の(訓練)コースが終われば、われわれはそれ以上人を派遣するつもりはない」とのべました。

 サリバン氏らは、ここ数年、ラテンアメリカ各国の大統領らと会見して、訓練生派遣中止を申し入れてきました。同氏は、メキシコ紙ホルナダとのインタビュー(五月十日付)で、中止には至らない国の中にも、派遣訓練生の数を減らした(チリ)、派遣の勧告をやめた(ボリビア)などの動きがあることを紹介。今日、ラテンアメリカには以前とは異なる条件が生まれている、「私たちは、国々の主権、尊厳、統合が優先され、従属から離れて、米国との新しい関係(otra relacion)をめざす動きが始まっている時を目の当たりにしている」とコメントしています。

 なお、米議会では、人権団体の要請を受けた民主党議員らによって、WHINSEC予算の削除や内部調査を要求する法案が提出されています。(党国際局 菅原啓)


 西半球安全保障協力研究所(WHINSEC) ラテンアメリカ諸国の軍幹部を招いて、訓練を施すという名目で二〇〇一年一月、米ジョージア州フォートベニングに開設されました。前身の「スクール・オブ・アメリカス」(SOA)はもともとパナマの米軍基地内にあり、左翼「ゲリラ」対策の拷問の方法なども伝授し、その卒業生たちは、各国でクーデターや軍事政権の中心人物となった歴史があります。WHINSECも基本的には、この「伝統」を受け継ぐもので、人権団体は、閉鎖を要求しています。


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