2007年5月28日(月)「しんぶん赤旗」

児童虐待防止法改正 どうみる

児童相談所立ち入り「強制」に

専門職員の増員が課題


図

 超党派の議員立法である改正児童虐待防止法が二十五日、国会で成立しました。来年四月一日から施行されます。

子の権利擁護

 改正のポイントは、虐待を受けているおそれがある子どもの安全確認、身柄確保のため、裁判所の許可状を得て児童相談所が強制的に立ち入ることができるようにしたことです。また、裁判所の承認で施設に入所している子どもへの罰則付きの接近禁止命令を盛り込んだほか、同法の目的に子どもの権利擁護が明記されました。

 今回の改正は、児童虐待防止法(二〇〇〇年成立、〇四年に改正)の付則に基づくものです。

 付則では、(1)保護者の同意が得られない場合の子どもの安全確認・安全確保(2)親権の一部・一時停止などを含んだ親権喪失について「施行後三年を目途」に見直すとしていました。

 超党派の国会議員でつくる「児童虐待防止法見直し勉強会」は〇六年十一月に発足。児童相談所長や研究者からのヒアリングなどを経て、今年四月、「勉強会」の児童虐待防止法改正案をまとめました。(親権問題は、民法改正などが必要なため、次回改定の課題になっています)

 「勉強会」メンバーである日本共産党の石井郁子衆院議員は、(1)子どもの安全確認や安全確保のため住居に立ち入るには裁判所の許可が必要(2)親権に含まれる懲戒権(民法八二二条)の削除(3)親子が再び暮らせるよう、虐待した親への相談・支援の拡充―などを改正点として提案しました。

共産党提案も

 これらの提案は、〇四年の前回改正時から共産党が主張していたものです。(1)については、今回改定に盛り込まれました。(2)、(3)については、「勉強会」のなかで、今後の検討課題となっています。

 改正案が審議された衆院青少年問題特別委員会(四月二十六日)では、塩川鉄也議員が、匿名の聞き取り調査であっても裁判所の許可状発効の際の証拠となるとの政府答弁を引き出しました。

 また塩川議員は、児童福祉司や児童心理司などの専門職員の増員を要求。厚生労働省の大谷泰夫雇用均等・児童家庭局長は「必要な増員等、対応に努めていきたい」と答えました。

 課題も少なくありません。現在、虐待の通告から親子の再統合支援までを受け持つ要保護児童支援対策協議会の設置が、地域ですすんでいますが、政府は、市区町村まかせにしているため、未設置自治体もあります。政府は、人的な支援など必要な手だてをとることが求められています。

子を救える手段増えた点で前進

 吉田恒雄駿河台大学教授・児童虐待防止全国ネットワーク代表 児童相談所職員が児童に直接会って安否を確かめることができない事例が増えるなか、保護者の人権を配慮しつつも被虐待児を早急に保護する措置の実効性が求められてきました。

 今回の改正では家庭・保護者への公的介入=裁判所の許可に基づく児童相談所の強制的立ち入り、保護者の児童に対するつきまといや徘徊(はいかい)の罰則つき禁止=が強化されました。強制介入が可能となり、従来、救えなかった子を救える手だてが一つ増えた点で、一歩前進といえます。市町村窓口と児童相談所の連携の仕組みも強められました。

 ただ、現場での公的介入の具体的運用については、慎重な配慮が必要です。

 他方で、虐待する親や被虐待児への支援施策は新たに盛りこまれませんでした。さらなる制度の拡充が求められます。

 また法改正とともに、人手不足の児童相談所の体制強化、満杯状態の児童を保護する一時保護所や児童福祉施設の増設も急がれています。


市民団体など施策拡充求める

 全国の児童相談所が対応した児童虐待相談件数は三万四千四百七十二件(二〇〇五年度)と過去最高となっています。このなかで児童虐待防止の運動をすすめる団体や個人は、児童虐待防止法の改正と防止施策の拡充を求めてきました。

 児童虐待防止全国ネットワーク(吉田恒雄代表)は十二日、東京都千代田区内でシンポジウムを開催、児童虐待防止法改正案の内容や意義について論議しました。その場では、児童虐待防止対策関係予算の増額、児童養護施設などでの子どもへのケアの充実や里親制度拡充の必要性も話し合われました。

 日本子ども虐待防止学会(小林美智子会長)は法改正に向けて一月に提言を発表しました。国や都道府県が、市町村への児童福祉司の配置、虐待対応職員の専門性の向上への支援を積極的に行うことなどを求めています。


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