2007年5月28日(月)「しんぶん赤旗」
レセプト(診療報酬明細書)請求
オンライン化 不安の声
費用は? 個人情報は? 問題山積
厚生労働省は全国の医療機関に対し、レセプト(診療報酬明細書)による医療費請求のオンライン化を義務づけようとしています。しかし、医療現場では「一律のおしつけは困る」と不安が広がっています。
11年から義務化
保険診療をおこなった医療機関に支払われる医療費(診療報酬)は、(1)医療機関が審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金や都道府県の国民健康保険団体連合会)に請求(2)審査支払機関が審査し、保険者に送付(3)保険者が審査支払機関を通じて、医療機関に支払う―という流れになっています。
この請求と支払いの作業は、紙のレセプトでおこなわれてきました。オンライン化は一部の医療機関ですでに始まっていますが、厚労省は「IT化の流れのなかで、電子媒体でも可能」として、二〇一一年四月からは、オンライン請求以外は認めないという画一的な方針を打ち出しました。
小池議員が追及
オンライン請求をおこなうかどうかは医療機関が判断すべきもの。参院厚労委員会(十日)の日本共産党の小池晃議員の質問で問題が浮き彫りになりました。
第一の問題は、オンライン化義務付けに「法律の根拠がない」ことです。厚労省の水田邦雄保険局長は、小池氏の追及に、根拠は「省令の改正」だけだと認めました。小池氏は「大きな負担となる義務化を国会での立法という手続きもなしにやることは許されない」と批判しました。
第二の問題は、費用負担の問題です。
神奈川県保険医協会のアンケートによれば、オンライン化に対応できるとの回答は32%にすぎません。約七割が不安の声を上げただけでなく、12%の医師が「義務化されたら開業医を辞める」と答えました。
最大の不安は、設備投資です。現在でもレセプト作成をコンピューターでおこなっている医療機関はありますが、コンピューターのメーカーごとに規格が異なるなど、そのまま接続できる保証もありません。医師会などによる請求の代行もできる、とされていますが、詳細は示されていません。
厚労省は、審査支払機関には〇六年度予算で三十億円の補助金を出したものの、医療機関側への財政支援はありません。厚労省は「IT加算をしている」と釈明しましたが、初診料で一回あたりわずか三点(三十円)。小池氏は「これで設備投資の費用といえるのか。診療側に義務を求めるなら、経済的な支援があってしかるべきだ」と要求しました。
第三の問題は、個人情報の管理です。診療報酬請求データというのは、健康という最もデリケートな個人情報だからです。
ところが、昨年三月三十一日に政府が閣議決定した「規制改革・民間開放推進三カ年計画」では、レセプト情報について、「民間等もふくめて活用する際、過度の厳重な要件を課していたずらに利用を制限することのないよう、個人情報保護に配慮しつつも、データ利用・分析に係る利用資格・手続き等の利用環境の整備をはかる」と明記されました。情報保護よりも民間活用優先としか読めない内容です。
オンライン化で、必要な検査や治療を機械的に切り捨てる審査がおこなわれる懸念もぬぐえません。
共産党以外賛成
問題がこれだけ山積しているレセプトのオンライン化ですが、国会で、具体的な問題点を指摘し、一律義務化の撤回を求めているのは日本共産党だけです。
昨年六月、医療改悪法が成立したとき、自民・公明・民主・社民の四党は、付帯決議で、オンライン化の「目標年次までの完全実施」を求めました。各党の姿勢が改めて問われています。
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