2007年5月28日(月)「しんぶん赤旗」
主張
クラスター爆弾
保有政策やめて禁止をめざせ
ペルーのリマで開かれていたクラスター爆弾の全面禁止をめざす国際会議が終わりました。二月のオスロ会議の四十九カ国を大幅に上回る六十八カ国が参加しました。
今回の会議は、オスロに始まり来年のアイルランド・ダブリンへと続く一連の国際会議でクラスター爆弾禁止条約を二〇〇八年までに作成する「オスロ・プロセス」を前進させるものです。議長国のペルー政府はクラスター爆弾禁止条約案を提示しました。条約づくりの議論はこれからが正念場を迎えます。
急がれる禁止条約
クラスター爆弾は広い範囲の軍事目標を破壊するのに使われます。しかし爆発せずそのまま残る不発弾が対人地雷化します。不発弾はおもちゃの形をしているため子どもたちが興味を示し、取り上げると爆発するしかけです。助かっても失明し手足を失うなどの被害者があとをたちません。軍事目的のために民間人を殺傷するのは許されないことです。
戦闘から住民を保護するのは国際法の一般原則です。日本も締結している陸戦の法規慣例に関する条約(一九一〇年)は「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器」の禁止を明記しています。「人を殺し障害が残るように設計」(英国「ハンディキャップ・インターナショナル」報告)された残虐兵器は一刻も早く全面的に禁止しなければなりません。
クラスター爆弾の禁止を、国連の特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)が扱うのは当然です。しかし、イラク、アフガニスタンで多用しているアメリカなどは技術的改良に焦点をあてるだけで、禁止の議論を妨げてきました。このため禁止を求めるノルウェーなど二十五カ国が、昨年十一月のCCW締約国会議で禁止のための行動をおこすことを宣言し、「オスロ・プロセス」につなげているのです。CCWの現在の枠内では禁止に道は開けません。国際社会の有志国連合がクラスター爆弾の全面禁止条約をつくり、CCWがそれを認めざるを得ないという状況をつくりだすことが大切です。
オスロ会議以降、オーストリアのように使用停止を決める国がでてくる一方で、ドイツのように不発弾の割合が1%以上のクラスター爆弾は禁止するが1%未満は容認するなどの議論がでています。イスラエルが昨年レバノンで使った不発弾率が1%未満の「改良型」でも多くの犠牲者がでています。1%未満を認めることは民間人の被害発生を認め続けるということです。こうした容認論を認めるわけにはいきません。
国際社会には、対人地雷のように全面禁止を求める国々が運動をおこして禁止条約を実現した経験があります。クラスター爆弾禁止のために「オスロ・プロセス」を前進させることがつよく求められます。
問われる日本政府
日本政府はこの問題で人道的観点と安全保障上の観点のバランスが大事だと主張しています。久間章生防衛相は「海岸線が長いため広範囲にわたって敵の上陸を撃破」(三月十二日参院予算委員会)するためクラスター爆弾が必要だといいます。「防衛計画の大綱」ですら「本格的な侵略事態生起の可能性は低下している」といっているのに大規模侵略に備えるかのようにいうこと自体矛盾しています。米軍と共同作戦する上で必要というのは許されません。
政府は国際社会の全面禁止条約づくりのとりくみに合流するとともに、自衛隊が持つクラスター爆弾の使用禁止にふみだすべきです。