2007年5月26日(土)「しんぶん赤旗」

なぜ? 若者にはしか流行

予防接種行政と関係


 首都圏の大学を中心に、はしかによる休講が相次いでいます。児童にも流行していますが、目立つのは若者です。なぜいま若い世代にまん延しているのでしょうか。(宮下進)


 法政大は多摩キャンパス(東京都町田市)で、はしか感染が確認されたとして、同キャンパスの授業を二十五日から六月三日まで休講にすると発表。帝京科学大学(山梨県上野原市)も二十五日から六月二日まで、全学の休講を決めました。

日本は「輸出国」

 はしかは、飛まつ空気感染で広がり、十日ほどの潜伏期を経て発症し、二度にわたる高熱のあと発疹が現れ四―五日で治ります。感染力が強く、幼少時にかかると死亡することもある伝染病です。現状では、発病したら特別な治療方法はなく、感染に対する有効な対策はワクチン接種による予防しかありません。

 欧米では一九八〇年代以降、児童に二回のワクチンを接種することによって、すでに根絶に近い状態です。それに比べ日本は対策が遅れ、海外に出た留学生などが留学先にウイルスを持ち込むことから「はしか輸出国」とさえいわれてきました。

 二回の接種が必要とされる理由は、一回の接種では、約5%の人が免疫ができないまま残ることと、十年たつと免疫能力が低下するためです。一回接種しただけでは安心とはいえません。

 いま感染者が多い若者が生まれた八〇年代後半は、日本では欧米などで実施されていた二回接種をやらず、一回接種だった時期と重なります。

 八九年からは、一回の接種で、はしか、おたふくかぜ、風疹(ふうしん)を予防できるとして三種混合ワクチン(MMRワクチン)が導入されました。しかし、重度脳障害などの副作用が多数出たため、九三年四月にMMRワクチン接種は中止になりました。

「努力」への変更

 九四年に法改正でワクチン接種が「義務」から「努力」に変わりました。接種による副作用の影響もあって、保護者の中には、義務化ではなくなった接種をためらう傾向が生まれました。

 国立感染症研究所の資料によると、MMRワクチン接種中止の直後に生まれた児童に免疫能力の落ち込みがみられるといいます。さらに、その数年前に生まれた児童には二回目の接種がされていないことから、今後、この世代で爆発的に流行する恐れがあることを同研究所は警告していました。

 昨年四月からはワクチン接種法改正により、乳幼児と小学校入学前の二回、接種することになりました。しかし、その効果が確認されるまでには長期間を要します。若者へのはしか流行は、予防接種行政の問題点と無関係ではありません。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp