2007年5月23日(水)「しんぶん赤旗」
主張
教育3法参院審議
統制強化ではなく教員増やせ
教育への国家統制を強める改悪教育基本法を具体化する教育三法(学校教育法、教員免許法、地方教育行政法)改定案の参議院での本格的な審議が、文教科学委員会で始まりました。
安倍内閣は、教育三法改定案で教育にたいする国の関与と統制を強化する一方で、世界からみてもあまりにも貧弱な日本の教育予算の現状を改善しようとはしていません。
国民の願いに反する
衆議院の審議でも、参考人から相次いで出されたのが、教職員の多忙化解消のための教育予算の大幅な増額です。「もっと子どもたちと向き合える時間がほしい。子どもたちのために授業準備がしたい」という教職員の努力と国民の願いに、政治がどうこたえるかが問われています。
日本は、世界の主な資本主義国三十カ国が集まっているOECD(経済協力開発機構)のなかで、経済力(GDP、国内総生産)にたいする教育予算の割合がもっとも低い国です。日本共産党の井上哲士参院議員が、「世界水準に引き上げるべきだ」と迫ったのにたいし、安倍晋三首相は、GDP比で少ないと認めたものの「単純には比較できない」といって、引き上げを否定しました。
保護者も教育関係者も圧倒的に支持している少人数学級を国の制度として実現する点についても、安倍首相は「全国一律ではなく」「画一的ではなく」などといって否定しました。
自治体独自の少人数学級は、東京を除く四十六道府県に広がっています。国民の要求が高く、教育効果も試されずみです。二年前までは、文部科学省の中央教育審議会も文部科学相も少人数学級の必要性を認めていました。この少人数学級実現の道を断ったのが、首相直轄の経済財政諮問会議であり、昨年の行革推進法です。五年間で一万人もの教職員の削減をしようというのです。
首相が英断すれば、国の制度として少人数学級の実現への道が開けるのに背を向けています。世界一の教育をめざすといいながら、貧弱な教育予算の水準は引き上げない安倍首相の「教育再生」は、国民の願いと離反しています。
衆議院の審議で浮かび上がったのは、改悪教育基本法をうけて国家統制の強化をはかり、これまで以上に教育現場を委縮させ、さらなる困難を押し付けることです。教員組織を大きく変え、これまでの校長、教頭、教諭という組織から、校長、副校長、主幹教諭、指導教諭、それに教諭という、職階による上意下達の体制をつくるのも、その一つです。免許更新制による官製研修の押し付けも、教員の資質向上につながらないばかりか、教員自身の自主研修を困難にします。
「我が国と郷土を愛する態度」など、多くの徳目を義務教育の目標として掲げ、その達成を義務づけるのは、国が特定の価値観を子どもたちに強制するもので、憲法に保障された内心の自由を侵害するものとして許されません。そればかりか、日本が過去にやった植民地支配や侵略戦争を「正しかった」と美化する「靖国史観」を学校現場に持ち込む動きもあります。「愛国心」の強制がこうした危険な動きに拍車をかけているとすれば重大です。
参院で廃案に追い込もう
国民も教育関係者も強く望み、教育効果も高い世界でも当たり前となっている少人数学級に背を向けて、子どもや学校に命令だけを強めるような「教育再生」では、教育はよくなりません。教育三法改定案は廃案にすることが必要です。
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