2007年5月21日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

ムダ遣い見直し 住民主人公で

大型再開発

超高層ビル建設やめて


 大型再開発の計画が、各地で住民の批判を受けています。多額の税金を投入して自然・住環境を悪化させ、暮らしや福祉の施策を後退させるからです。先のいっせい地方選挙でも大きな争点になりました。東京都板橋区と熊本市の状況を紹介します。


運動で3年間計画進まず

東京・上板橋駅前

商店街に旗林立

 いま、上板橋駅南口の商店街には「不信不安だらけの再開発中止を求む!」のぼり旗が新たに増え、文字通り“林立”しています。対象は、この地域の二・二ヘクタールに事業費三百億円超の再開発計画です。

 地域住民からは、二〇〇四年二月に「四〇階建て超高層ビル・一四〇億円の税金投入の上板橋駅南口再開発の中止を求める陳情」が板橋区議会に提出(賛同署名数三、六六八人)されていたのに、この年十一月に都市計画決定されました。しかし、地域住民の強い反対運動が展開され、事業強行をくい止めています。

 さかのぼれば、一九八〇年に旧日本住宅公団が再開発用地として板橋区に頼まれて、五千二百平方メートルの民間の土地を取得したことがことの発端です。

 ところが、ごく一部の推進派以外の地元住民や商店街の機運は盛り上がらず、そのことを理由に同公団が独立行政法人に組織替えの時期に用地処分の方針を決め、〇四年公募入札を実施しました。しかし、区当局は再開発推進の方針を変えず、ペーパーカンパニーなどに四度この土地が転がされました。

生活できない

 議会審議には欠かさず住民の傍聴が続けられました。審議の中では、当初から半分の住民権利者が“転出”しても成り立つ資金計画になっていることや、生活再建ができないことなどが次々と明らかになりました。

 審議の様子はその日のうちにニュースや手書きのポスターで地域住民に報告されてきました。住民は、再開発についての勉強会や情報交換の会合を頻繁に開催し、「区画整理・再開発対策全国連絡会議」の交流集会にも参加してきました。

 こうした住民運動の取り組みの中で、「同意」は土地所有権利者の半分から増えません。このまま、法定要件の「三分の二」を超えさせないで、再開発反対の住民の側が三分の一以上を確保し続ければ、住民追い出し・まちこわしの再開発を断念に追い込む見通しがでてきます。

 板橋区はこの間、「財政難」を口実に区民のくらし・福祉の施策を大幅削減する「行革」を強行する一方で、巨大再開発事業は強行しようとしています。

 この事業推進与党の地元の自民・公明の議員は今度の区議選では減票、地域住民と住み続けられるまちづくりを一貫して追求してきた日本共産党の私は四百余票を増やし、七選されました。

 「住民が主人公」のまちづくりをめざし、引き続き全力をあげてがんばります。(山内金久・東京都板橋区議)


共産党がシンポや提言

熊本市

新幹線開通に

 熊本市は「都市間競争に負けるな」と、「政令市を実現して九州府の首都を目指す」ことを最優先し、「新幹線駅周辺再開発」を最重点戦略にしています。

 駅西土地区画整理事業三百億円、東A地区市街地再開発事業百二十八億円など、総額で七百七十億円(そのうち三百六十七億円は借金)を超える計画です。県の負担も連続立体交差事業や新幹線建設など一千億円を超えます。

 いま市民の中から「そんな計画でいいのか」と疑問の声が出ているのが、東A地区市街地再開発事業です。

 この事業は、一九九三年に民間地権者による準備組合が設立され、市は側面から支援する立場ではじまりました。以来、キーテナント確保に奔走し、百貨店、大型スーパー、ホテル、住居系、教育関連等をつぎつぎに候補にあげて打診してきました。ところが、二〇〇〇年にいたるもすべて断られ、ついに〇四年九月に組合施行を断念しました。そして、翌十月に突然、「このままでは新幹線開通までに間に合わない」ということで、市施行で進めることが発表されました。その中核公益施設として「図書情報センター」構想も発表されました。

 この構想には市議会でも各会派から「なぜ駅前に第二図書館なのか」「議会だけでなく市民のなかで議論も合意も無い中で、新幹線開通に間に合わないということでどんどん進めていいのか」等々の意見が出されました。幹部職員をはじめ大多数の市職員が疑問を投げかける状況となりました。

 日本共産党市議団は、議会の中で大いに議論するとともに、シンポジウムの開催や、二度にわたる市民アンケートに積極的に取り組み、党独自の提言も第一次、第二次と発表して、そのつど市長に申し入れをしてきました。アンケートでは、図書館に賛成するのは4%前後で、「市民的論議を尽くすべき」が五割を超え、「森と水の広場」が四割近くとなっていました。

東京の業者が

 しかし、市執行部は市民的論議・合意を無視してすすめています。しかも、「民間のノウハウを最大限に活用する」ということで、「建設業務代行制度」を使って、民間大手のディベロッパーとゼネコンに丸投げする公募をしました。応募したのは東京の森ビルグループと三井不動産グループだけで、数人の審査委員会による非公開審査で森ビルグループに決定しました。

 その計画では、公共施設は付け足しで、百三メートルの高層高級マンションとなっています。この計画が報道されると、「図書館と思っていたら今度は超高層マンション。一体どうなっているのか」と、またまた疑問と反対の声が相次ぎました。

 私たちは、お金もあまりかけずに、熊本らしい駅周辺整備をしてほしいと願う市民とともに、今後も粘り強く議会内外で奮闘する決意です。(重松孝文・前熊本市議)


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