2007年5月20日(日)「しんぶん赤旗」

主張

解釈改憲

戦争参加の方向が見えている


 政府が「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)の初会合を開き、憲法が禁止した集団的自衛権の行使についての検討を開始しました。

 安倍首相は「日米同盟がより効果的に機能するようにすることが重要」と強調して、「日本が何を行い、何を行わないのか」の検討を会議に求めました。もちだした事例は政府がこれまで憲法上許されないとしてきたことばかりです。会議のメンバーも全員、日米軍事同盟強化と憲法改定を主張する論者にしました。明文改憲に先立ち解釈改憲を際限なく広げようという安倍首相のくわだては重大です。

対米追随の異常性

 安倍首相が示した事例は、公海上で米軍艦船が攻撃を受けた場合の自衛隊の武力対処、アメリカ本土に向かう弾道ミサイルの撃墜、活動をともにしている他国軍隊の武力による救出、戦闘と「一体化」した後方支援、の四つです。「これまでの政府の見解」の見直し対象です。

 憲法九条は戦争を禁止しています。そのため政府は、武力行使は「日本防衛」のために限られるといってきました。四事例は「日本防衛」と無関係です。憲法上、米軍を守りアメリカの本国を防衛するための武力行使に議論の余地などありません。

 安倍首相は集団的自衛権の行使が許される場合もあるなどと強弁しています。これはおかしな議論です。

 集団的自衛権の行使とは、日本が攻撃もされていないのに、武力を行使してアメリカを助けることです。アメリカがたたかっている第三国が日本を攻撃していないのに、日本の方からアメリカ本土や米軍部隊を防衛するために第三国を先制攻撃するという議論です。戦争を放棄している日本が「日本防衛」と無縁の国際紛争の解決のため、武力を行使するのは憲法九条一項に明白に反します。安倍首相は集団的自衛権の行使がありうるなどといった憲法を愚ろうする議論をやめるべきです。

 安倍首相が明文改憲以前に、解釈改憲を急ぐのはアメリカの要求に応えるためです。二〇〇〇年にアーミテージ氏(後に米国務副長官)らがまとめた日米関係についての第一次報告で、集団的自衛権を否定していることが「日米協力を束縛」していると批判して以降、アメリカ政府の改憲要求はむきだしになりました。この五月におこなわれた日米防衛首脳会談でもゲーツ米国防長官が集団的自衛権の行使を容認するようせまったと伝えられています。

 集団的自衛権の行使について「日米軍事同盟における双務性を高めてこそ日本の発言力は増す」と安倍首相は口にしますが、それはアメリカいいなりの異常さをいいつくろうものでしかありません。アメリカのご機嫌をとりつくろうためには憲法もこれまでの政府見解もふみにじってかまわないというのは、文字通り日本の主権を投げ捨てるものであって、対米追随の恥ずべき態度です。

改憲反対が大勢

 最近の世論調査はどれも安倍首相の憲法九条改定への反対が増えていることを示しています。集団的自衛権の見直しも、共同通信社の調査では「今のままでよい」が62%です。

 日本が他国にたいして武力を行使することを禁じた憲法九条はアジアと世界の宝です。日本が集団的自衛権の行使を認め戦争に道を開けば、アジアと世界の国々から信頼されなくなります。異常な対米追随をやめ、明文改憲も解釈改憲も許さない運動が急務です。



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