2007年5月18日(金)「しんぶん赤旗」

主張

1―3月GDP

貧困化の悪循環を断ち切れ


 内閣府が発表した一―三月の実質GDP(国内総生産)は前期比で0・6%増、年率に換算すると2・4%のプラスとなりました。

 国内需要と国外需要に分けてGDPの増加要因を見ると、七割弱が国外需要の効果です。年率13・9%の大幅増となった輸出が経済成長の最大の要因です。

 輸出頼みをいっそう強めている日本経済の姿が鮮明になっています。

自滅的な「回復」

 今回の景気「回復」の推進力は、アメリカ、ヨーロッパの好景気や中国の高成長に支えられた、大企業の輸出と設備投資です。

 ところが、設備投資は年率3・7%のマイナスに転じました。住宅バブルがしぼんだアメリカ経済の先行きへの不安や、自動車の国内販売の不振などが響いています。

 米国では百兆円規模の貿易赤字に産業界の不満が高まっています。ゼネラル・モーターズは、円安で日本車の輸入が急増して自動車産業に壊滅的な打撃を与えていると主張し、「国際的に協調して円の対ドル相場を九〇円の水準まで押し上げる」よう米政府に求めています。

 サマーズ元米財務長官は、アメリカがアジアの輸出市場としての役割を果たす時期は「おそらく今が最後になる」と警鐘を鳴らしています。

 欧州連合(EU)も、円安・ユーロ高への批判を強めています。

 輸出頼みの矛盾が噴出しつつあることは明らかです。

 家計消費は増加しました。春物衣料やレジャー関連の好調など記録的な暖冬の影響です。一方で全体の雇用者所得は減少しており、一人当たり賃金のマイナスも続いています。所得が増えなければ家計消費も低迷から抜け出すことはできません。

 成長率はプラスですが、GDP統計は極めて不安定な日本経済の実態を浮き彫りにしています。

 ことし三月期の決算で、大企業は全体として五期連続の増収増益となる見通しです。過去最高益を四期連続で更新することになります。トヨタ自動車に代表される大企業の好業績は、下請けへの単価切り下げ、派遣や「偽装請負」など不安定雇用のまん延と表裏一体です。

 財界はさらにコスト削減を強めながら「残業代ゼロ」法案の実現を求め、法人課税や社会保障負担を抑えて低所得者ほど負担が重い消費税に転嫁するよう迫っています。今回の景気「回復」は不安定雇用と貧困の拡大を推進力に組み込み、やればやるほど国内需要を掘り崩す自滅的な「回復」です。

 決算によると、大企業の株主への配当は三年前から倍加し、六兆円に上っています。株式の保有が多いのは外資、大企業・銀行、高額所得者です。しかも、安倍内閣と自民党、公明党は証券優遇税制を継続しました。これでは所得格差がますます広がらざるを得ません。

悪魔のサイクル

 一九九〇年代の激しい円高のとき野村総研は、円高にコスト削減で対応する大企業のやり方が、輸出増加でさらに円高を招く「悪魔のサイクル」に陥っていると指摘しました。

 今回の景気「回復」は、「貧困と格差拡大のサイクル」となって深刻な社会問題を生んでいます。しかも、安倍内閣は六月に住民税の大増税を強行しようとしています。

 こんな経済ではくらしはよくなりません。税制や社会保障の所得再分配機能を再建し、人間らしい労働のルールを確立して、貧困と格差拡大のサイクルを「くらし応援のサイクル」に反転させることが必要です。


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