2007年5月16日(水)「しんぶん赤旗」
離婚後300日以内の出生問題
子どもの立場で救済を
法務省の通達 問答で考える
条件付きで現夫の子に
前進だけれど改善は1割だけ
民法で、離婚後三百日以内に生まれた子は前夫の子と規定している問題で、法務省が通達を出し、条件付きで現夫の子と認められるようになりました。どんな前進と問題点があるのか、問答で考えました。
健診や予防注射うけられない
ひかり 再婚した夫との子どもなのに、戸籍上、前夫の子としてしか出生届が認められないという“三百日問題”どう思う?
あかり 民法(七七二条)は、結婚二百日後、離婚後三百日以内に誕生した子は、結婚期間中の夫の子と推定する、となっている。でも、離婚や再婚が増え、離婚にいたる道もいろいろでしょ。離婚届を出してから三百日たたないで生まれた子が、前夫の子ではないということも生じているの。出生届は現夫の子として受理されないので、その子が無戸籍になるケースが生まれている。
ひかり 家庭裁判所の審判で解決する道もあるんでしょう?
あかり そうね。でも、審判は、前の夫からの訴え、合意が必要なのよ。前夫の居所がわからないとか、家庭内暴力から逃げてきた場合などは審判も受けられない。そうなれば子どもは無戸籍になってしまう。
ひかり 無戸籍だと住民票がないってことよね。そうしたら健康診断も予防注射もうけられないわよね。保育所入所だって困るわ。
あかり だから戸籍窓口の関係者も政府に改善を要望していた。自治体のなかには、無戸籍の子の住民票をつくって乳幼児健診の受診などができるようにしたところもでているの。
当事者と世論がひらいた一歩ね
ひかり 当事者や自治体からの要望があっても政府が放置してきたのね。でも法務省が、最近やっと「通達」をだしたって報道されていたわよね。
あかり 出生届に現在の夫の子であることを公的に証明できる医師の証明書を添付することで、離婚後三百日以内の場合でも出生届を受理するという「通達」ね。厚生労働省や外務省も規定を見直して、戸籍がなくても児童手当や児童扶養手当、保育入所、健診ができるようになった。条件つきだけど旅券申請もできるようになった。
ひかり 当事者の声と世論がひらいた一歩ね。
あかり そうね。でも、この「通達」で全部が解決できるわけではないのよ。別居はしていても裁判に時間がかかって正式に離婚できていない場合や家庭内暴力などで法的な離婚ができていない場合は、救済できないのよ。法務省の発表でも改善できるのは一割ですって。長勢法務大臣や自民党の一部が貞操観念をもちだして、離婚後の妊娠の場合は認めるが離婚前の妊娠は認めない、という考え方をもっているからなのよ。
ひかり 子どもたちが生まれによって差別されたり不利益を受けることがないようにするためにどうするかでしょう。おかしいわ。
あかり 本当ね。ところで、共産党は、医師の証明書などを出生届に添付することで受理し、加えて女性の再婚禁止期間を民法(七三三条)で百八十日と規定しているのを百日に短縮し、救済の幅を広げることが必要だといっているよ。その再婚禁止期間の短縮について、自民党や公明党のプロジェクトチームでも、一時検討されたけど、結局は見送られたわ。
ひかり どうして?
あかり 四月初めの自民党の法務部会で、“再婚禁止期間の短縮は、選択的夫婦別姓などとパッケージで正式な民法改正につながる”という意見がでて、待ったがかかったって、報道されている。
世界の流れにも逆行している
ひかり いまの不合理な状況を改善するためのものなのに、反対なの?
あかり 自民党のなかに、民法に残されている戦前からの古い規定さえ変えてはならないという考え方があるの。再婚禁止期間の短縮、選択的夫婦別姓、婚外子差別禁止などについて、「家族の一体感がそこなわれる」と、反対の意見が根強くあるわ。
ひかり 家族を大事に思うこととは別よね。
あかり 安倍首相も、「婚姻制度そのものの根幹にかかわることについて、いろんな議論がある。そこは慎重な議論が必要だ」といってブレーキをかけたんですって。でも世界の多くの国では当たり前になっていることよ。しかも国連も日本にたいして強く改正をもとめている。
ひかり 世界の流れにも国民の願いにも逆行していることを、許していてはいけないわね。