2007年5月14日(月)「しんぶん赤旗」
社会保険庁
年金 記録ミス次々
民間委託で増加の危険も
社会保険庁の分割・民営化法案をめぐる審議で、年金保険料の記録ミスなどが次々と明らかになっています。十一日の衆院厚生労働委員会で厚生労働省は、基礎年金番号が付かず宙に浮いた年金加入記録約五千万件のうち、生年月日が誤っていたり、記載がないケースが厚生年金で三十万六百七十五件、国民年金で千百六十六件あることを明らかにしました。
未統合5千万件
政府は一九九七年に加入者全員に基礎年金番号を導入しました。それまでは転職や結婚のたびに別の番号が付けられていたため、複数の番号を持つ人について記録の統合をすすめていますが、未統合の記録が約五千九十五万件(〇六年六月現在)も残されています。
社保庁はこれまで、五千万件の大半は受給資格のない人や死亡者が占めており、受給確定前に加入状況を加入者が確認する仕組みになっているので順次、解決できると説明してきました。しかし、生年月日が記載されていないため加入者と結びつかない記録が大量に生まれるおそれがあります。
柳沢伯夫厚労相は同日の委員会で「皆無と言いきるのは難しい」とのべました。
年金記録は当初、手書きの書類で管理していましたが、一九八〇年代にコンピューターに入力し直しました。生年月日がないのは、このときの入力ミスか事業所の届け出ミスなどが原因とみられています。
社保庁が昨年からおこなっている年金の特別相談で、加入者から指摘を受けて二十四万件の納付記録を訂正しました。
旧年金番号で記録が発見されたり、旧姓で登録されていたものを除くと氏名などの入力ミスは二万七千件もありました。
未統合の約五千万件のうち、保険料を払い続ければ受給資格を得られる三十五歳未満の加入者の記録が百六十万件にのぼることも判明しており、年金の受給権が失われることのないよう徹底した調査と対応が求められています。
納付記録の訂正について柳沢厚労相は、「保険料の領収書など資料がなくても、状況から納付が確実に行われていると推測できる場合は、記録を訂正する」(十一日)と答えています。
安定運営危うく
公的年金は、何十年にもわたる加入記録や保険料の確実な管理が不可欠です。そのため国が直接責任を持って事業を一体的に運営し、専門性や公平・中立性を保つため公務員が担っています。
記録ミスなどがないようにすることは当然ですが、審議中の政府案は、それとは逆に危うくする内容になっています。
社保庁をバラバラに解体し、業務は民間業者に委託。業者は競争入札で数年ごとに替わり、都道府県で業者も違ってきます。職員もその都度替わり、コスト優先のため、不安定雇用労働者が業務をおこないます。
委託業者ごとに運営された徴収・記録管理・給付などの業務を、経験や専門性の乏しい職員が担うことになれば、年金制度が安定的に運営される保障はなくなります。
民間委託によって、個人の年収などプライバシー情報の漏えいや不正利用も指摘されています。
十一日の委員会で日本共産党の高橋千鶴子議員は、「民間委託では年金にかかわる重要で専門的な業務が安定的に継続されるとは考えられない。長い年月、正確な記録が求められる年金業務も、安定的な運営のための収納対策や事業所の適用対策なども、いずれも国の責任でやるべきだ」と強調しました。
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