2007年5月13日(日)「しんぶん赤旗」

主張

事務所費疑惑

また「ザル法」で逃げるのか


 自民党の松岡利勝農水相らが政治資金収支報告書に領収書添付の義務がない事務所費や光熱水費を巨額計上し、資金の使途を隠す不正な処理をしていた疑惑がもたれている問題で、自民、公明両党は「再発防止」の名で政治資金規正法を改定することに合意しました。

 過去、幾多の金権腐敗事件で、自民党は、真相解明を拒否し、無意味な法制度いじりに問題をすりかえ、疑惑に幕を引いてきました。安倍政権もまた、この手法を繰り返そうとしています。

「透明化」に背向ける

 自公の合意は、一政治家に一つ認められている「資金管理団体」に限って、五万円以上の経常経費支出について領収書添付を義務付けるというものです。国民の目から隠したい支出は、資金管理団体以外の政治団体の支出として処理できます。支出を五万円未満に小口分散するということも可能です。資金の透明化にはなんの役にもたたない、まったくの「ザル法」です。

 安倍首相は与党の合意について「国民の強い声もあり、私が指示した」と胸をそらしました。首相が、世論を意識して直接乗り出しながら、こんなものしかまとめられなかったというのではかえって深刻です。

 実際、この程度の制度いじりにさえ、自民党は頑強に抵抗しました。「事務量が膨大になる」「自由な政治活動ができなくなる」という自民党の言い分は、政治資金の透明化にまったく背を向けるものです。

 いまの制度でも、政治団体は経常経費の支出について帳簿を備え、領収書類を保管することになっているのです。これを公表するかしないかの違いで、事務量はかわりません。

 経常経費の領収書添付が義務付けられていないのは、家賃や水道料金など限定された費目で、決まった額が出て行くだけだからです。それが公表されることが、どうして政治活動の自由にかかわるのか。国民の目から隠したい不明朗な支出をここに紛れ込ませて処理していると、みずから認めるようなものです。

 公明党は、夏の参院選も意識して、さかんに積極ポーズをとり、与党合意は「公明案を受け入れさせた」と売り込みに躍起です。しかし、規制対象を「資金管理団体に限る」としたのは、自民党との妥協の落としどころとして、公明党の側から言い出したものです。疑惑を解明するどころか、隠ぺいに手を貸す態度です。

 政治資金をめぐる疑惑では、野党第一党である民主党も角田義一前参院副議長、中井洽元法相ら幹部議員の不正が自民党と相前後して次々発覚しました。民主党はこれらについて、国民に十分な説明も、まともな処置もしていません。自浄力を欠くのでは、政権与党の腐敗をただす野党の役割を担うことはできません。

現行法でも解明が必要

 塩崎官房長官は、この法改定は過去にさかのぼるものではなく、松岡農水相が新たな説明を求められることはないと表明しました。結局、「なんとか還元水」の大臣をかばい続けるための目くらましにすぎないことは明らかです。

 松岡氏らの問題は、現行の政治資金規正法にも違反する虚偽報告が行われたという疑惑です。疑惑の解明は現行法のもとで厳格に行われるべきです。法制度を改めるというなら、すべての抜け穴をふさいだ実効あるものにしなければなりません。日本共産党は疑惑のあいまい決着を許さず、真相を国民の前に明らかにするために全力を尽くします。



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