2007年5月12日(土)「しんぶん赤旗」
米陸軍が規制強化措置
兵士のネット通信検閲
イラク戦情報隠し狙う
【ワシントン=山崎伸治】米陸軍はこのほど、兵士による電子メールのやりとりやインターネットの「ブログ」の掲載に関する規制を強化する措置を実施しました。「作戦治安」上の理由をあげていますが、イラクの生々しい様子を一般に知らせないことを狙ったのは明白です。これに対し、米軍に好意的なブログを掲げる「ブロガー」からも反発の声があがっています。
イラク開戦以来、現地の報道機関は米軍などによるさまざまな制限をうけ、都合の悪い情報が伝わらない仕組みがつくられてきました。そのため個人が運営するブログ、ことに現地の事情に詳しい兵士によるものは、それに代わる情報源ともなっています。
米陸軍は二〇〇五年七月、イラク現地からのブログ掲載に関する「手引き」を策定していました。今回はさらに「作戦治安」に関する陸軍規則を改定しました。
改定された規則は、軍にかかわる情報を公の「フォーラム」に公開する場合、「直属の上司および作戦治安担当士官」に事前に「相談する」ことを兵士に義務付けました。「フォーラム」には手紙のほか、電子メールやブログの掲載、インターネットの掲示板への書き込みが含まれています。事実上、インターネットを使った通信は事前検閲されることになります。
また規則は、公にしてはいけない写真として、「即席爆発装置による攻撃、戦闘シーン、犠牲者、破壊ないしは被害を受けた装備、戦死者、軍事施設の防護策」などをあげており、イラクを念頭においていることは明らかです。
陸軍のボイス報道官は「ブログ関係者とは、引き続き自分たちのやりたいこと、やる必要のあることができるよう、ことさら注意深くバランスをとろうとしてきた」(四日付軍事専門紙アーミー・タイムズ電子版)と弁明しています。
しかしブロガーの間には、「(規則に)書かれているとおり規制すれば、いまのようなブログはなくなってしまう」(四日付米軍準機関紙「星条旗」電子版)との懸念が広がっています。
こうした声は反戦の立場からよりも、むしろ米軍に好意的なブロガーから上がっています。イラク帰還兵のフィリップ・カーター氏は自身のブログで「米国内で国民と軍との離反をさらに悪化させる」と訴えています。
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