2007年5月12日(土)「しんぶん赤旗」

改憲手続き法案

与党、聞いたのは首相の声


 主権者・国民の声は聞かずに、採決直前に聞いたのは改憲派・安倍晋三首相の声だった――改憲手続き法案という重要法案で、自民、公明の与党が十一日の参院憲法調査特別委員会でとった行動は、国民の声を聞く中央公聴会を拒否する一方で、議員提案の法案なのに首相に出席を求めて発言させたことでした。

 ここに九条改憲のための条件づくりという法案の本質と、改憲スケジュールにあわせて連日審議をごり押しした与党の姿勢が象徴されていました。

「汚点」残した民主

 民主党も「中央公聴会を開かなければ、憲政史上に汚点を残す」(特別委理事)とまで主張していたのに、最終段階では首相出席と付帯決議を条件に与党と妥協、採決日程で合意しました。こうしたやり方こそ憲政史上に汚点を残すものです。

 連日審議の過密スケジュールだけでなく、地方公聴会や参考人質疑を無理な日程で設定し、五月採決の環境を形だけ整えようとした与党のやり方もひどいものでした。

 ある公述人が関連資料を手にすることができたのは当日朝。当日になって初めて誰が出席するかわかる。自民党推薦の公述人は自分の党の県議会議員…。

 こんな事態が続き、公述人からも「準備時間がない」と批判が相次いだのに、与党と民主党は反省することなく突き進みました。そして、ついに十日の参考人質疑では、与党推薦の参考人が決まらないまま開かれるという異常事態まで招いたのです。

 法案の内容に対しては、各界各層から「国民の憲法制定権を乱暴に踏みにじる教員・公務員規制は撤廃せよ」「あいまいな規定で主権者・国民を縛るな」という声が寄せられました。

 日本共産党の追及で、法案提出者は最低投票率を定めない憲法上の論拠を語れなくなり、有料CM問題についても「財力の多寡による不平等が生じる恐れがある」と認めざるを得なくなりました。

 与党と民主党が採択した付帯決議は、今後の審議で、▽低投票率により憲法改正の正当性に疑義が生じないよう最低投票率制度の是非などについて検討を加える▽公務員・教育者の地位利用による国民投票運動の規制については、禁止される行為と許容される行為を明確化する―などと本来なら法案に盛り込むべき内容を列挙しました。法案には徹底審議すべき根本的欠陥があり、採決できるような状況では到底ないことをみずから暴露するものです。

「九条守れ」高まる

 なぜこれほど急ぐのか。手続き法案の成立期限を、在任中の改憲を目指す安倍首相のスケジュールにあわせようとしていることは明らかです。

 その改憲の中心は、九条の改憲であり、日本の侵略戦争を正しかったとする“靖国派”の本心をもつ安倍首相が、アメリカに追随して「海外で戦争をする国」をつくるための改憲です。

 こんな改憲は国民が認めません。だからこそ、「九条の会」が全国に草の根でひろがり六千を超えて増え続け、この間の世論調査でも改憲派が減り、九条守れの声が高まりつつあるのです。

 憲法のあり方を決めるのは主権者である国民です。安倍首相や改憲派のもくろみをこえ、“九条守れ、憲法改悪阻止”の声は必ず国民の多数となるでしょう。(藤原直)



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