2007年5月12日(土)「しんぶん赤旗」

主張

手続き法案強行

国民無視の採決に抗議する


 九条改憲と地続きの改憲手続き法案が、参院憲法特別委員会で、自公と民主の合意で採決に付され、与党のみの賛成で強行可決されました。

 慎重な審議を求める国民の声を無視した暴挙に強く抗議します。

批判の声を聞かず

 衆院で同法案が採決されたのは四月十三日。この時点の各種世論調査では、今国会での手続き法成立を求める声は一割にも満たず、圧倒的な国民が慎重な審議を尽くすことを求めるなか、それを断ち切って強行したものでした。それだけに新たな審議の場となった参院が「再考の府」としての役割を発揮することがとりわけ求められました。

 与党は「ゼロからの審議でなく衆院の足らざるところを」(法案提案者の自民・保岡興治衆院議員)と二院制の根本を踏み外す態度をとり、委員に考える余裕も与えぬ連日審議の超過密日程を押し付けました。審議時間をただ形式的に消化し、採決に持ち込む姿勢は露骨でした。

 短い審議のなかでも、国民の八割が必要と認める最低投票率を拒むのはなぜか、自由な国民の意見表明が保障されるべき国民投票運動で五百万人もの公務員、教育者の自由な意見表明を制限することが許されるのか―など日本共産党の仁比聡平議員の追及に、与党は答えていません。

 財界が金で憲法を買うことになる有料広告、改憲を発議した国会に置かれ中立性を確保できない広報協議会、改憲案づくりを促進する憲法審査会の常設等々、審議をすればするほど矛盾と問題点が浮かび、法案は文字通りぼろぼろの状態です。

 地方公聴会や参考人質疑では、改憲や手続き法案への賛否の立場を問わず、慎重な審議を求める声が一致して出されました。重要法案では慣例の中央公聴会も開かれず、審議は尽くされたどころか、生煮えです。

 それがどうして採決なのか。議会の民主主義のルールを踏みにじる背景は「在任中の改憲」を公言する安倍晋三首相と改憲派の執念です。

 仁比氏は安倍首相への質問で、自民党内で作成された改憲へのスケジュール表をつきつけました。今年五月の手続き法成立を起点に二〇一一年夏の改憲案発議、同年秋には国民投票という改憲への工程がこと細かに書かれています。長くてもあと五年程度の安倍首相の在任中に改憲を実行するためには、今国会での手続き法成立が不可欠というのが、改憲派の切迫した事情です。

 改憲派の勝手な都合のために、慎重審議を求める国民の声などおかまいなしで、改憲派に圧倒的に有利な手続き法を押し付けたというのがことの真相です。こんな乱暴なやり方は絶対に許されないものです。

 民主党が与党の無理押しする過密審議に抵抗せず、採決日程にあっさり合意したのも重大です。憲法問題でも自民への対抗軸を持たず、九条改憲を競い合う民主党の役割がいよいよ鮮明になりました。

広がる危ぐと不信

 安倍首相が目指す九条改憲の眼目は、アメリカと肩をならべて海外で戦争する国づくりです。そのきなくささに国民は警戒感を募らせています。手続き法案で示された安倍内閣の強硬姿勢は、世論との亀裂をますます広げるものです。

 与党は十四日の参院本会議での成立をねらい、民主党もこれを容認しています。このままこの手続き法案を成立させることがあってはなりません。日本共産党は幅広い国民と手をたずさえ、「九条守れ」の声を広げていきます。



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