2007年5月11日(金)「しんぶん赤旗」
米連邦裁
ポサダ容疑者起訴却下
キューバ機爆破のテロ免罪
【メキシコ市=松島良尚】キューバ旅客機爆破事件の主犯として告発されているポサダ・カリレス容疑者について、米テキサス州エルパソの連邦裁判所は八日、七件の起訴のすべてを却下しました。この結果、テロリストが釈放され、完全に自由の身となったことになります。
同容疑者は米国に逃亡した際、米司法当局に入国管理法違反だけで起訴されていました。
米CNN放送などによると、起訴が却下されたのは、立件の根拠とされた不法入国に関するポサダ容疑者との面接内容が憲法に違反し、同容疑者の証言などが裁判で用いることができないと裁判所が判断したため。
カードン裁判長は、黙秘権の通告にあたって通訳を介さなかったことや、通常なら三十分程度の面接が本人に通知しないまま犯罪調査を含めて八時間も行われ、容疑者にほとんど翻訳しないまま記録が作成されたことなどを指摘しました。
ポサダ容疑者は、米国で二〇〇五年五月、不法入国で逮捕されました。不法入国経路に関する虚偽証言などで今年一月に起訴され、先月に保釈。今月十一日から裁判が始まる予定でした。
米中央情報局(CIA)の工作員だったポサダ容疑者は、キューバのカストロ政権転覆を図って、旅客機爆破のほか、キューバでのホテル爆破などを重ねてきました。ベネズエラで逮捕され、裁判中に逃走。ベネズエラの引き渡し要求を米政府は拒否しています。
米政府は「二重基準」
ベネズエラとキューバが批判
【メキシコ市=松島良尚】キューバ旅客機爆破事件の主犯とみなされているポサダ・カリレス容疑者が米国で釈放されたことについて、ベネズエラで九日、同国のマドゥロ外相とキューバのペレス外相が共同で記者会見し、米政府をきびしく批判しました。
マドゥロ外相は、かつてベネズエラから脱獄したポサダ容疑者の身柄引き渡しの実現に引き続き全力を尽くすと述べ、国連や米州機構(OAS)、非同盟諸国会議などにこの問題を持ち込むと強調。「米国は国際機関や国際法、世界の良識をあざ笑っている」と批判しました。
ペレス外相は、今回の釈放は米国がすすめるテロ戦争の「二重基準」にほかならないと批判。「ポサダ容疑者の刑務所送りを回避するためのホワイトハウスの計画」だと指摘しました。
ベネズエラの代理で身柄引き渡し請求をしているペルティエラ弁護士も、米政府は司法制度を操作してポサダ容疑者の起訴が却下されるよう仕向け、釈放の責任が米連邦裁判所に及ぶようにみせかけたといいます。起訴が却下されるよう、不法入国に関する面接を意図的に憲法に抵触させたという指摘です。
米議会内からも米政府に対する批判が強まっています。
民主党のデラハント下院議員は九日、「ブッシュ大統領がただちにポサダ容疑者を拘束する措置をとらない限り、世界はテロとのたたかいにおいてこの政権が二重基準を持っていると結論づけるだろう」との声明を発表。同議員らはブッシュ政権の対応に関する公聴会の開催を求め、先週、ゴンサレス司法長官に書簡を送っています。