2007年5月10日(木)「しんぶん赤旗」

主張

社保庁「改革」法案

民間任せが年金不信加速する


 衆院で社会保険庁「改革」法案の審議が始まりました。法案は社保庁を解体し、新たにつくる非公務員型の「日本年金機構」に年金業務を移して民間委託できるようにします。

 「民間に任せればよくなる」という口実で、財界が要求している年金民営化に踏み込む内容です。

見通しない民間委託

 法案によると国は年金の財政と管理運営に責任を負うだけで、年金の適用、徴収、給付、記録管理など一連の年金業務は機構に委任します。

 機構の理事長や理事には民間人を登用します。内閣官房に「学識経験者」の会議を設置し、その意見を受けてまとめる「基本計画」に従って機構の年金業務を民間委託します。

 政府は三年前、社保庁長官に損保ジャパンの村瀬清司副社長を据えました。村瀬社保庁は保険料の納付対象者を減らす本末転倒の納付率競争をあおり、三十八万件を超える不正処理を引き起こしています。「民間手法」の名で持ち込まれたのは、架空契約や保険金不払いなど保険会社の無法体質にほかなりません。「民間に任せればよくなる」という議論に何の根拠もないことは明らかです。

 公的年金は加入状況や保険料の長期にわたる確実な記録・管理が不可欠です。数年ごとに業者が入れ替わる民間委託では国民の不安を広げるだけです。新たな天下りの横行、個人情報の業界流出も懸念されます。

 法案は本来国が負担すべき事務費を国民の保険料でまかなう仕組みを導入し、保険料の流用を固定化します。国の責任放棄であり、国の負担は「効率化」しても、給付に回されるべき保険料の効率は低下します。

 国民年金の保険料未納者から国保証を取り上げて「短期保険証」に切り替える「収納対策」は、健康を人質に取った陰湿な国民いじめです。

 年金は本来、老後の生活を保障する制度です。ところが、いま国民がくらしの先行きで最も不安を感じているのが年金制度です。

 支給開始年齢の繰り延べ、「百年安心」と偽って、保険料の連続値上げや給付水準の一律引き下げを強行した政府・与党の年金「改革」が、不安と不信の大もとにあります。

 とりわけ国民年金は、保険料値上げで月一万四千百円に達した保険料をさらに値上げする上、その保険料を四十年間払い続けても支給額は月六万六千円にしかなりません。

 対象者の四割が国民年金の保険料を払っていないなど、年金制度の深刻な「空洞化」が進んでいます。

 根深い年金不信に、社会保険庁の相次ぐ不祥事が拍車をかけ、国民の怒りの火に油を注いでいるのです。

 必要なのは社保庁から関連企業への天下りをなくし特定業者との癒着・腐敗を根絶すること、保険料の流用を防止し、ノルマ主義を改めるなど不祥事の根源にメスを入れることです。不信の大もとである年金の連続改悪をやめ、最低保障年金の導入や支給額の底上げなど、老後の生活保障という年金本来の役割を取り戻す改革に転換することです。

国民には有害無益

 経済同友会は四月に発表した提言で、厚生年金の所得比例部分を民営化し、基礎年金は消費税の増税でまかなうよう求めています。大企業の社会保障負担を減らし、日米保険業界のビジネスチャンスを広げることが狙いです。

 「改革」の看板で財界の身勝手な要求の実行に踏み出し、年金不信をいっそう拡大する社保庁関連法案は国民にとって有害無益です。廃案にするしかありません。


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