2007年5月9日(水)「しんぶん赤旗」

主張

温暖化防止

国連報告を真剣に受け止めよ


 地球温暖化の実態、影響、緩和策をまとめた国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告が公表されました。

 温暖化の実態に関する第一作業部会の報告(二月)は、化石エネルギーに頼り、高い経済成長を続ける社会を追い求めれば、今世紀末の平均気温は前世紀末と比べ四度上昇すると予測しました。さらに、温暖化の影響に関する第二作業部会の報告(四月)は、気温上昇が二―三度以上となれば、世界全域で経済的損失が発生すると指摘しました。

持続可能な社会の経費

 四日に公表された第三作業部会の報告は、温暖化の緩和策をまとめました。気温上昇を二―三度に抑えるには、温室効果ガスの排出量を二〇五〇年までに半減する必要があり、そのための経費は三〇年時点で世界の国内総生産(GDP)の3%未満と見込みました。

 人間が生きてゆくのにほどよい気候や気温を保つために、大気中の二酸化炭素濃度の安定化が必要です。持続可能な経済、社会、環境のための経費も示して温室効果ガス削減の可能性を明らかにしたのです。

 温室効果ガス削減のための経費は増えるばかりではありません。報告は、大気汚染の減少は健康によい影響を与え、温室効果ガス削減の経費を相殺するとしています。日本で、自動車の排ガスによる大気汚染の被害者が、健康被害の救済ときれいな空気を求めて、国と自治体、自動車メーカーの責任を追及してたたかっていることは、地球温暖化防止にとっても大きな意義があります。

 報告は、温室効果ガス削減の技術的な対策として、火力から風力・太陽光発電への転換、ハイブリッド車、バイオ燃料の導入をあげています。日本でも植物からつくったエタノールを混ぜたバイオガソリンの販売が始まったばかりです。植物は大気中の二酸化炭素がもとになっているから、燃やしても二酸化炭素を増やすことにはなりません。日本では再生可能エネルギーの導入は大きく遅れており、促進が求められています。

 報告が、温室効果ガス削減の対策として、政府と産業界との自主協定の締結をあげていることも注目されます。ドイツでは、両者の自主協定で大幅削減を取り決めています。

 日本政府は、国連報告に真剣に向き合う必要があります。「京都議定書」にもとづいて一〇年前後までに排出量を一九九〇年比で6%削減するという国際公約の達成が危うい状況です。

 二酸化炭素排出量の八割は企業・公共部門からです。このうち産業部門のエネルギー消費(36%)や運輸(14%)、業務(16%)が多くを占めています。一方、家庭からの排出は自家用車やごみを含めて二割です。

 産業界のとりくみが真っ先に問われます。

産業界は責任果たせ

 日本経団連は、削減ゼロの「自主行動計画」にしがみつき、京都議定書にもとづく排出規制に反対し、先進工業国への新たな削減目標設定に抵抗しています。この産業界の態度と政府の弱腰にマスメディアも「先進国が総排出量削減の道筋を示さなければ、無責任とのそしりは免れない」(「日経」五日付社説)と批判しています。

 国連の報告は、「〇四年に先進国は、世界人口の20%、世界の国内総生産(GDP)の57%、温室効果ガス排出量の46%を占める」とのべ、先進国の責任を明確にしています。

 政府と産業界は、国際公約を達成しなければなりません。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp