2007年4月30日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

自然豊かな里山は今

貴重な動植物守れ


 雑木林、ため池…、人と自然が一体となってつくり上げてきた里山は、身近な山でありながら、自然が豊富です。開発から里山を守った東京都あきる野市と、広域ごみ処理施設建設計画から里山を守れと住民が運動している兵庫県豊岡市のとりくみを紹介します。


約48ヘクタールの保全に予算化

水路の復元に着手

東京・あきる野市

希少種の捕獲採取が禁止に

地図

 東京都内に三百以上あった里山は、開発のためその大部分が姿を消してしまいました。その中で、あきる野市内の横沢入(よこさわいり)という里山が保全されることになりました。

 この横沢入の一部約四十八・六ヘクタールを昨年一月、東京都が「里山保全地域」に指定したからです。昨年度と今年度で東京都は、事業費として二千二百十万円の予算を計上し水路などの復元に着手しています。あきる野市も今年度、三百二十五万円の予算で巡回、点検などを進めています。この間、希少種のトウキョウサンショウウオやキンランなどの捕獲・採取禁止の措置もとられました。

 また地権者、農林業関係者、NPO(民間非営利団体)など団体、行政が構成メンバーになる運営協議会も発足して、今年三月までに七回の話し合いがされています。

 横沢入は、面積百二十ヘクタールほどの五日市丘陵の一部です。クリ、コナラなどの広葉樹の二次林が残り、小川やたんぼがあります。良好な食物連鎖が保たれて、ホタル、カヤネズミ、ムササビ、タヌキなど昆虫、小動物、小鳥類が生息している貴重な場所です。

 一九八〇年代末から九〇年代にかけて東京都は、東の東京湾臨海部開発とともに、西の秋留台開発といって圏央道を中心に三千九百ヘクタールという巨大開発計画を進めようとしていました。この開発で進出する企業の従業員に高水準住宅(一戸約一億円)を八百三十五戸供給する目的で横沢入開発は進められようとしました。開発主体は民活(民間活力路線)でJR開発室が進めることになりました。

 この開発計画に対して「自然を大切にするまちづくりを考える会」「小学校職員有志の会」など住民団体が議会へ保全を求める請願・陳情運動を進めました。これを無所属(自民党系)と公明党議員がすべて否決をして開発が強行されようとしました。

 日本共産党はこの開発計画が明らかになって以来、一貫して横沢入の保全を主張し続けました。この地域は、東京都も「緑のフィンガープラン」でほかの丘陵とともに、緑を保全すべき地域として位置づけていました。区域内に、石臼などに加工された伊奈石の採掘遺跡もあります。

研究者からは活用に期待も

 九〇年代半ばのバブル経済崩壊などで、東京都もこの秋留台開発計画の断念を余儀なくされ、JRもこの住宅開発の中止を表明、市もこの開発計画の見直しを行いました。

 この横沢入の保護のため頑張った研究者からも今後の活用に期待の声があがっています。水生昆虫の研究者で元高校教師の宮下力さんは、「保全地域に指定されてよかった。これからも大切なフィールドとして観察を続けたい」と述べています。(鈴木富雄・日本共産党元あきる野市議)


コウノトリ生息地、古墳群も

ごみ処理施設いらない

兵庫・豊岡市

地図

 兵庫県北部の豊岡(とよおか)市では奇妙な現象が起きています。中貝宗治市長は「コウノトリと共生する小さくても世界に輝く都市」とマスコミに売り込んでいますが、「コウノトリ最後の野生生息地」だった日高地区上郷の里山に、ごみを日量百七十トン、二十四時間焼却する広域ごみ処理施設建設計画を推進しています。

合併特例債を財源に進める

 中貝市長が管理者を務める北但行政事務組合が政府の「循環型社会形成補助金」を受け合併特例債を財源に進め、官製談合を繰り返している超大型企業が広域大型廃棄物処理施設をつくる計画です。

 この組合は、二〇〇五年合併によって生まれた新温泉町、香美町、豊岡市の一市二町で組織され、東西が京都府と鳥取県に接する面積約千三百八平方キロ(宅地は二十二平方キロ)。「広域」ごみ処理により、この山間地を毎日ごみ収集運搬車が走りまくることになります。

 この組合議会で日本共産党議員が計画の当初から「現在の三カ所の焼却施設は安定している」「ごみの一部は堆肥(たいひ)化しており、全量焼却はおかしい」「長距離運搬は住民の不便と燃費が増え温暖化防止に反する」「コウノトリも生息した里山を破壊すべきでない」と繰り返し要求してきました。

住民が結束し反対運動広げ

 管理者(市長)は「一カ所であれば効率的で安い」「堆肥化は需要が少なく処分に困る」「環境に配慮した施設を建設する」と答弁を繰り返していましたが、「地元上郷住民の同意がなければ法定の環境調査と建設着手はできない」との市長答弁を引き出しました。

 この論戦が大きな力になり、住民の多数が建設反対で結束し計画は三年越しに「環境影響調査」前でストップしています。「里山の自然と暮らしを破壊するごみ処理施設はいらない」と「暮らしを守る会」を結成し住民過半数の反対陳情署名を集め、学習・集会を繰り返し、日本共産党日高支部の努力も続き、住民運動はほかの地域に広がり始めています。

 さらに昨年春、山で仕事をしていた会員によって「計画地に埴輪(はにわ)や古代瓦発見」のニュースが飛び出しました。すでにこの地域では旧日高町教育委員会の目視調査で計画地付近には百八十カ所以上の古墳群が確認されていました。しかし、管理者(市長)は「古墳は珍しくない。記録保存で十分。建設計画は変更しない」という態度です。

 中貝市長はごみ処理施設受け入れを条件に「上郷地区を環境モデル地区にする」構想を打ち上げました。これに対して地元住民は建設の賛否を超えて「円山川堤防の強化と堤防上の県道の拡幅整備」を要求しています。いずれも国土交通省と兵庫県の事業ですから、国政、県政にかかわる課題となっています。

 まさに市民の暮らしの環境を守るのか、「コウノトリとの共生」が美辞麗句にとどまるかの競り合いが続いています。(安治川敏明・共産党豊岡市議)


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