2007年4月29日(日)「しんぶん赤旗」

主張

日米首脳会談

誰にかけがえのない同盟なのか


 安倍晋三首相がブッシュ大統領と首脳会談をおこないました。「従軍慰安婦」問題で「狭義の強制はなかった」という首相発言が大きな反発を買い、議会やメディアが批判を強めるなかでの会談でした。

 安倍首相はあいまいな「謝罪」で批判をかわしながら、日米軍事同盟を「かけがえのない日米同盟」といい「ゆるぎない同盟として強化する」と公約しました。首脳会談を通じてあきらかになったのは、日米軍事同盟強化の危険な方向と安倍首相の異常なアメリカ追随姿勢です。

解釈改憲を対米公約

 「慰安婦」問題は議題にならないといわれていましたが、実際には会談の大きな焦点となりました。安倍首相が三月以来示している「謝罪」をブッシュ大統領が、「慰安婦」問題で軍の強制があったことを認めた河野談話(一九九三年)と「同様」率直なものだと評価する形で、逸脱するなとクギを刺したことは重要です。安倍首相は共同記者会見で、「二十世紀は世界のどこでも人権を侵害してきた」とのべて「慰安婦」問題を人権一般の問題にすりかえる発言をしました。これでは世界の人々との溝を深めるだけです。

 安倍首相はブッシュ大統領に「戦後レジーム(体制)の脱却をめざす」とのべました。侵略戦争の反省のうえに戦争をしないという戦後の平和のしくみから脱却するというのは、戦争をするしくみをつくるということです。憲法の平和原則をないがしろにする安倍首相の態度はとうてい許すことはできません。

 「安全保障の法的基盤をつくり変えるための有識者会議を設置した」ことをブッシュ大統領に報告したのは重大です。これは、戦後日本の平和の基盤である憲法九条の改悪をめざしつつ、まずは憲法解釈を変え、政府が憲法違反としてきた集団的自衛権の行使を可能にすることを公式に対米約束したことを意味します。

 有識者会議が検討するのは、アメリカを標的にした弾道ミサイルを自衛隊が撃ち落とす、戦闘中の米軍艦船を自衛隊が防衛する、イラクなど海外の戦場で自衛隊が米軍部隊を守る、などです。日本への攻撃がないのに、自衛隊が血を流してアメリカを守るというのは、「自衛」どころか「先制攻撃」にほかなりません。日本を戦争への道にひきずりこむ亡国の考えです。憲法九条と両立しません。有識者会議の「可能」の結論を見越して、公約するなど言語道断です。

 イラク問題でも安倍首相の態度は卑屈で異常です。イラク戦争が誤った侵略戦争であることがあきらかとなり、アメリカ議会が来年三月末までに米軍の撤退を政府に義務付けた補正予算案を可決しているのに、安倍首相は、イラク戦争を「理解・支援」するといい、「日本は常にアメリカとともにある」とまでいっています。アメリカいいなりにイラクとの戦争に参加し、ミサイル防衛、米軍再編を進めるのでは、戦争の危険を広げるだけです。

戦後政治の原点に反し

 日本は、侵略戦争を反省し二度と戦争をしないことを戦後復興の原点にしました。この憲法九条の先駆性は、イラク戦争反対の流れや北朝鮮問題を外交的・政治的に解決するといった現実政治と共鳴しています。

 日米首脳会談がうたいあげた日米同盟は、「慰安婦」問題で批判される安倍首相やイラク問題でゆきづまるブッシュ大統領にとっては「かけがえのない」ものでも、国民にとっては重大な危険をもたらすものでしかありません。


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