2007年4月28日(土)「しんぶん赤旗」
こちら社会部
相次ぐ保険金不払い こんな事例も
日本生命 事故で視力失った男性に
「障害治る」と申請拒否
大手生命保険会社の保険金不払いが表面化しています。しかし不払いは、問題になっている「請求を促さない」「請求内容の見落とし」などの事例だけではありません。最大手「日本生命保険」の契約者から「支払いを申請しても拒否するケースがあり、今回の不払いは一部にすぎない」との告発が本紙に寄せられました。請求そのものを拒否するケースが相次ぐなら、不信はさらに広がります。(広島県・突田守生)
告発したのは四年前、事故で視覚障害を負った広島県の男性(53)。県から一級の身体障害者手帳を交付されたにもかかわらず、日本生命から「治る可能性がある」として視覚障害の保険金申請を拒否されました。男性は、昨年から日本生命などを相手に裁判で争っています。
男性は、日本生命が支払いどころか申請そのものを拒否したことに驚き、保険の専門家に問い合わせましたが「普通は申請書を渡さないことはあり得ない」とのことでした。不誠実な日本生命の対応に男性は怒りをあらわにします。
「一方的な判断で申請すら拒否し、不払い件数にカウントしないという悪質なやり方は許されない。申請書を受け付けて審査し、そのうえで加入者に回答するのが筋ではないか」
男性は、経営する会社で機械の整備作業中に高温の溶剤を顔面に浴びました。その熱傷によって視力を失い、光が分かる程度になってしまいました。
日本生命は、約款に「視力が〇・〇二以下になって回復の見込みがない場合をいいます」とあるため、角膜移植が可能なことを申請拒否の理由としています。
しかし、角膜移植を受ける場合、ドナーによる提供は、片眼で十数年待つことになります。そのうえ、角膜移植の権威の眼科医から「リスクを伴うため移植は勧めない」と言われ、手術しないことに決めました。
男性が仮に手術を受けた場合を想定して「失敗して眼球が脱落したら、保険金は出るか」と問い合わせたところ、日本生命側は「手術時には契約が切れているから、保険は利かない」と答えたといいます。
男性は、不信感をつのらせています。
「こんなことが通用すれば、保険会社はすべての申請を拒否できる。裁判に勝って、給付の門戸を少しでも広げたい。金融庁は今回、『画期的な指導をおこなった』などと報道されているが、まだまだ生保業界に甘いのではないか」
男性の妻も「金融庁が指導した不払い問題で表に出たのは、がんや脳梗塞(こうそく)などの三大疾病がほとんど。重度障害や脊椎(せきつい)損傷の場合、『治る可能性がある』と言って不払いを繰り返しているのではないでしょうか。裁判に訴えるにもばく大な費用がかかり、泣き寝入りしている人がたくさんいるのでは」と話しています。
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