2007年4月28日(土)「しんぶん赤旗」
ファシズム解放記念日祝う
レジスタンスは戦後の出発点
イタリア
ファシズムからの「解放記念日」にあたる二十五日、イタリアでは解放六十二周年を記念する取り組みが全国各地で行われました。レジスタンス(反ファシズム抵抗運動)の意義を否定する一部の右派勢力に対し、ナポリターノ大統領が正面から批判を加えたことが注目されました。(党国際局=島田峰隆)
現地からの報道によると、北部ミラノでは恒例の全国集会に平和団体、労働組合、自治体、文化団体などから約三万人が参加。「記憶を失う国民は未来も失う」などと書いた横断幕や旗を持って市内をねり歩きました。
ローマではナポリターノ大統領、プローディ首相が参加して記念式典が開かれ、レジスタンスの犠牲者を追悼して献花しました。プローディ首相は「世代が代わっても記憶は維持されなければならない。なぜならそれは今を良く生きる手段だからだ」と述べました。
意義否定の右派
近年は、右派勢力からレジスタンスの意義を否定したり、反戦運動や侵略の歴史をゆがめる動きが目立っています。
その急先ぽうが右派政党「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ前首相です。同氏は首相在任中、「ムソリーニは誰も殺していない」と述べるなど侵略戦争への反省を欠いた言動がたびたびあり、近隣諸国との関係を悪化させてきました。
同氏は今年の「解放記念日」にあたっても、「左翼の反米イデオロギー」による一部の人々の祭典だなどと発言。自分は在任中に一度も「解放記念日」の式典に参加したことがないと“実績”を誇りました。
大統領自ら反論
これに対して「レジスタンスの偉大な理想は有効性と現実性を失っていない」と厳しく反論したのがナポリターノ大統領です。
同大統領は、ベルルスコーニ氏の発言の数時間後に演説。レジスタンスは一般市民も参加した国民的性格を持った抵抗だったと強調。「イタリアの解放は方法に違いがあってもその精神と目的において一貫した無数の努力の成果だった」と語りました。
さらに戦争放棄や基本的人権を定めた戦後の憲法の「出発点」にレジスタンスがあったと言及。反ファシズムの憲法を持ったことが「国連の枠組みのなかでイタリアが相応の国際的な地位を得ることへ道を開いた」「敗北と孤立の後に、西側の社会で役割を回復し、欧州の中心で平和と協力の大事業に参加することを可能にした」と述べました。
ナポリターノ大統領の演説は、名指しはしないものの、その内容からしてベルルスコーニ氏への批判だと受け止められています。全国紙レプブリカは、「大統領がベルルスコーニ氏に歴史の授業」と大きく報道しました。
解放記念日 第二次世界大戦末期の一九四五年四月二十五日、ドイツ軍に占領されていたイタリア北部の諸都市が、連合軍の到着に先立って国民的レジスタンスによって自力解放を勝ち取りました。この運動の成果は戦後の民主的な憲法に実りました。戦後、この日は祝日に指定されました。